児童文化賞・音楽賞

概要

ENEOS児童文化賞(創設1966年)

日本の児童文化の発展・向上に大きく貢献した個人または団体に贈られる賞です。童画家、教育者、写真家、児童文学作家、子供新聞の編集者、ミュージカル主宰者など、さまざまな分野で児童文化に貢献された方々の中から受賞者が選ばれています。

賞創設のきっかけは1963年に遡ります。この年、当時のモービル石油創業70周年記念行事として、赤い馬をテーマにした創作童話を一般公募したところ、3,461点もの応募がありました。川端康成、波多野勤子、壷井栄、坪田譲治、藤田圭雄、筒井敬介の六氏により審査が行われた結果、福永令三氏の「十二色のクレヨン」が特選に選ばれました。

特選を含めた入選作を収録した童話集「赤馬物語」を全国の小学校へ寄贈したところ、教育界や児童文学界より大きな反響をいただいたことから、対象分野を児童文化全般に広げ、全国的に著名な活動から地域の活動まで幅広く受賞者が選ばれています。

ENEOS音楽賞(創設1971年)

日本の音楽文化の発展・向上に大きく貢献した個人または団体に贈られる賞で、邦楽部門および洋楽部門(本賞・奨励賞)の二部門にて構成されています。

邦楽部門では、雅楽、能、狂言、琵琶楽、尺八楽、箏曲、多様な三味線音楽、囃子など日本の伝統音楽の分野における演奏家・団体、さらには作曲者、研究者、評論家など、幅広い分野の中から邦楽の発展に寄与された方々が受賞者として選ばれています。また、これまでに23名の受賞者が、受賞後に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されています。

洋楽部門においては、作曲、指揮、声楽、そしてピアノ、ヴァイオリン、チェロなどの洋楽器の演奏、音楽ジャーナリズムや研究・評論などの分野において、日本の洋楽の発展に貢献された方々が受賞者として選ばれています。さらに1989年より、優れた若手音楽家を励ますために、本賞に加えて奨励賞が設けられました。

邦楽部門と洋楽部門を併せ持ち、単年度内の功績ではなく、それまでの実績全体に視点をおいた選考がなされている点が特色です。

2022年 受賞者(敬称略)

第57回ENEOS児童文化賞 アフリカ子どもの本プロジェクト(アフリカこどものほんプロジェクト) NGO(代表・さくまゆみこ)

プロフィール

©沢田としき

2004年に発足。アフリカの子どもと日本の子どもを本でつなぐことを目的に活動を続けている。具体的には、(1)ケニアに設立した子ども図書館を継続的に支える、(2)識字や楽しみのための本を必要としているアフリカの子どもに本を届ける、(3)日本の子どもたちにアフリカの文化や子どもたちの暮らしについて伝える、という3点を活動の柱としている。
(1)については、現地と連絡をとりつつ現在2館の司書への給料、図書や教科書の購入、備品や建物の保全などを支援している。どちらの図書館も年間300日程度開館し、約2万人に利用されている。(2)については、要請を受けて児童書を送ったり、現地に赴く方に託したりしている。(3)については、日本で出版されたアフリカ関連の児童書をすべて読み、選書会で推薦本を決め、解題とともにウェブ公開している。また、推薦本やパネルや地図などをまとめた「展示セット」を用意して貸し出すことで、「アフリカを読む、知る、楽しむ 子どもの本展」を日本各地で開催している。同時に講演、子ども向けワークショップなどのイベントを行うこともある。

贈賞理由

絵本『エンザロ村のかまど』(文:さくまゆみこ 絵:沢田としき)の刊行をきっかけに、2004年、ケニア西部の エンザロ村に子ども図書館「ドリームライブラリー」開設にたずさわった有志が設立して以来、同NGOは18年間にわたってアフリカと日本の子どもたちを本でつなぐ活動を精力的に続けている。現地の子ども図書館を継続的に支え、識字や読書欲求に応えるべくケニア以外のアフリカ各地にも本を届けるとともに、アフリカの文化を日本の子どもたちに伝えるため、アフリカに関する子どもの本の選書を継続し、それを展示しての図書展や、文化イベント、講演会などを約100名の会員のボランティアで地道に全国各地で催している功績を高く評価したい。

(児童文化賞 選考委員会)

第52回ENEOS音楽賞 邦楽部門 鶴澤 津賀寿(つるざわ つがじゅ)(女流義太夫 三味線方)

プロフィール

©山之上雅信

東京都出身。1980年、早稲田大学第二文学部演劇専攻卒業。1983年、義太夫教室第36期受講。1984年1月、竹本駒之助に入門、三味線を四代目野澤錦糸に師事。1986年5月、駒之助の義母鶴澤三生の幼名津賀寿を継ぎ、本牧亭にて初舞台。鶴澤重輝の預かり弟子となる。1994年より、竹本駒之助の相三味線を勤める。2009年、重要無形文化財(義太夫節)総合指定保持者認定。義太夫節保存会会員。2009年より、国立劇場竹本研修講師。郡司かぶき、花組芝居等、小劇団の演劇への作曲提供、参加多数。2004年以降、寄席粋曲柳家小菊と、2019年以降「SATZ」(髙橋翠秋、藤本昭子、善養寺惠介)、2020年以降「ちーむD」(下野戸亜弓、藤舎千穂、鳳聲千晴、大和櫻笙)等、ユニットへの参加も多数。

贈賞理由

義太夫節の三味線演奏家である鶴澤津賀寿さんは、これまで女流義太夫節界の三味線を牽引してきた。このジャンルでの唯一の人間国宝である太夫の竹本駒之助師の相三味線として多くの舞台を務めてきた。人形を伴う文楽における義太夫節演奏とは違い、女流義太夫節は語りと三味線による素浄瑠璃であるが、津賀寿さんの三味線は太夫との阿吽の呼吸の中で登場人物のせりふや情景を浮き立たせる魅力によって国内外の聴衆を魅了している。最近は、義太夫三味線のための創作活動にも取り組み、古典的な手法の中に新しい風をもたらしている。さらに2019年に発足した胡弓・地歌三味線・尺八・義太夫三味線という異色の組み合わせによるアンサンブル「SATZ」で新たな挑戦を始めている。本委員会は、鶴澤津賀寿さんの卓越した演奏と多面的な活動を評価し、彼女がこれからも日本音楽に寄与することを期待する。

(音楽賞邦楽部門 選考委員会)

第52回ENEOS音楽賞 洋楽部門本賞 野平 一郎(のだいら いちろう)(作曲家、ピアニスト、指揮者)

プロフィール

©YOKO SHIMAZAKI

東京藝術大学、同大学院修士課程作曲科を修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に学ぶ。ピアニストとしては内外のオーケストラにソリストとして出演する一方、多くの国際的名手たちと共演し、室内楽奏者としても活躍。古典から現代までレパートリーは幅広い。近年はコンチェルトの弾き振りや、自作自演を含めた指揮活動も多い。現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京文化会館音楽監督。東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学教授。2021年より3年間モナコ・ピエール皇太子財団音楽評議員を務める。仙台国際音楽コンクールピアノ部門審査委員長。

贈賞理由

現代は、ルネサンス時代のように多分野にわたって人並み外れた能力を発揮する万能の天才の出現は難しいといわれる。領域の分化や専門化がより先鋭化し、どれ一つをとっても充実した成果を収めることが容易ではなくなったからである。しかし音楽の多様な分野で超一級の成果を上げ続ける人がわが国にもいる。野平一郎氏は、フランスIRCAMなどからの委嘱作品を始め、その作品が2度にわたって尾高賞を受賞したわが国屈指の作曲家であり、ピアニストとしては、古典から現代までの幅広いレパートリーで、室内楽奏者やソリストとして力量を発揮、近年は指揮者としても活躍の場を広げている。しかもベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲の詳細な研究書を上梓する音楽研究者でもあり、さらには静岡音楽館AOIの芸術監督や東京文化会館の音楽監督として、館運営のみならず企画にまで優れた手腕を見せるなど、まさに多くの分野にわたって、縦横無尽の活躍を展開している。これまで重ねられてきた稀有の業績とわが国音楽界への貢献を顕彰するとともに、今後のさらなる活躍を期待して、ENEOS音楽賞本賞を贈賞する。

(音楽賞洋楽部門 選考委員会)

第52回ENEOS音楽賞 洋楽部門奨励賞 脇園 彩(わきぞの あや)(メゾソプラノ)

プロフィール

©Ambra Iride Sechi

東京藝術大学卒業、同大学大学院修了。2013年、文化庁派遣芸術家在外研修員としてパルマ国立音楽院に留学。ロッシーニ・オペラ・フェスティバルのアカデミーに参加し『ランスへの旅』メリベーア侯爵夫人役でイタリアでのオペラデビューを果たす。これまでに、ミラノ・スカラ座、ボローニャ歌劇場、パレルモ・マッシモ劇場など世界主要劇場へ出演。2018年にはペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバルに『セビリアの理髪師』ロジーナ役で出演、ロッシーニ没後150周年記念という特別な公演で大きな話題となった。日本では2017年、藤原歌劇団『セビリアの理髪師』ロジーナ役でオペラデビュー。新国立劇場では2019年『ドン・ジョヴァンニ』ドンナ・エルヴィーラ役で出演以来、『セビリアの理髪師』ロジーナ役、『フィガロの結婚』ケルビーノ役で出演。2021年10月には『チェネレントラ』タイトルロールで出演し、その圧倒的な存在感と卓越した歌唱力で聴衆を魅了した。現在イタリアを拠点に活動し、最も注目される国際的なアーティストのひとりである。

贈賞理由

国際的に最も注目される若手歌手の一人としてイタリアを中心に活動する脇園彩は、2014年ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティバル『ランスへの旅』メリベーア侯爵夫人役でのデビューを皮切りに、同フェスにたびたび出演するなど見事な実績を重ねている。日本では2017年、藤原歌劇団『セビリアの理髪師』ロジーナ役でデビューして以来主要な公演での出演を続け、そのつど新鮮な驚きと賞賛で迎えられてきた。ロッシーニなどの演奏至難の曲を軽やかな美声で完璧に歌いあげる高度のテクニックを大きな支えとしつつ、劇場感覚に富んだ演唱で感情表現を深め、人物像を真実味豊かに創造する能力は抜群。そのオペラ歌手としての総合的表現力を今後も積極的に生かしつつ歩みを進めることが期待されている。

(音楽賞洋楽部門 選考委員会)

選考委員(敬称略、順不同)

児童文化賞 野上 暁 児童文化研究家
仲居 宏二 放送コンサルタント・元聖心女子大学教授
山極 壽一 総合地球環境学研究所所長
音楽賞 邦楽部門 徳丸 吉彦 聖徳大学名誉教授・お茶の水女子大学名誉教授
塚原 康子 東京藝術大学教授
加納 マリ 日本音楽研究家
音楽賞 洋楽部門 関根 礼子 音楽評論家
中村 孝義 大阪音楽大学理事長・名誉教授
舩木 篤也 音楽評論家

歴代受賞者リスト(敬称略)