第41回(2010年)
JX童話賞
【一般の部 優秀賞】

おれの父ちゃんは本作者:本間舞

おれの父ちゃんは本

 母に強く言われると、そうだよなあ、父ちゃんが書いた本くらい読まなきゃ息子として悪いよなあ、という気持ちになってくる。
「うん、まあ、読んでみるよ。」

 国語の授業はいつもうわの空。読書なんてふだんは全然しない。だからユズルは、飽きずに読み終えられるだろうか、と不安になりながら本を開いた。
 しかし、これがなかなかおもしろい。
 セリヌンテイウスの弟子がメロスにもう駄目でございますと言ってきたときははらはらしたし、それでもメロスが刑場にたどり着いたときは心底安堵した。最後にメロスがまっぱだかだとわかったときには、げらげらと大笑いしてしまった。
「おれの父ちゃん、すごいなあ。」
 ユズルが亡き父に尊敬の念を抱きながら、本の後ろのほうをめくっていくと……。
「うん? なんだこれ?」
 ユズルは大きく目を見開いた。

「ただいまー。ユズル、からあげ買ってきたわよー。」
 仕事から帰ってきた母に、ユズルは昨日渡された本を突きつけた。
「おかえり、うそつき母ちゃん!」
「なによ、うそつきって。」
「太宰治ってひと、おれの父ちゃんじゃないだろう。このひと、昭和二十三年に亡くなってるじゃん! 
おれは平成生まれだ!」  「じゃあこっちがお父さんよ。」
 母は昨日とは別の箱から
『銀河鉄道の夜』という本を取りだす。
「本当にこの、宮沢賢治って
いうひとなんだろうな?」
「読んでみなさい。」
 ユズルは母が信用しきれなかったので、受けとった本の後ろのほうをぱらぱらとめくり、著者プロフィールを調べた。そして叫ぶ。
「やっぱりこのひとも父ちゃんじゃない! 昭和八年に亡くなってるよ!」
「じゃあこっちの本。」

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