第42回(2011年)
JX童話賞
【一般の部 優秀賞】

貝の補聴器作者:斉藤隆

貝の補聴器

 その日から也作じいさんは、避難所を忙しくかけまわりました。爪切りを届けたり、子どもの遊び相手になったり。自分の補聴器が戻ったことで、みんなと会話ができるようになり、みんなのしたいことが分かるようになったのです。
 ある日のことです。
「はい坊や、お菓子をもらってきてやったよ。」
 と、也作じいさんがお菓子を届けると、
「ありがとうございます。ちょうどいま、この子がお菓子を欲しがっていたのですよ。也作さんは、何も言わないのによく気がつきますね。」  と、おかあさんが言いました。
「いえいえ。さっき、あなたがわたしにお菓子が欲しいと言ってくれたからですよ。」
「いえ、わたしは何も言っていませんけど。」
 おかあさんが不思議がっていると、そばにいた坊やが、也作じいさんの補聴器を指さして言いました。
「おじいさん、変! 耳に貝がらを入れているよ。」
 也作じいさんは驚いて、耳から補聴器を外してみました。それは、真っ白できれいな巻貝でした。也作じいさんは、急に元に戻ったように元気が無くなり、外にトボトボと歩きだしました。すると、貝から声が聞こえてきました。桜ばあさんの声でした。
「おじいさん。補聴器なんて関係ありませんよ。耳が遠くても、あなたがみんなのことを思えば、人の心は聞こえるものですよ。お節介、大いに結構。その貝は、わたしの最後のお節介ですよ。」
 也作じいさんは思いました。桜ばあさんは海に帰ったのだと。也作じいさんは、貝を耳に当ててみました。
「がんばれ。」
 桜ばあさんの声が聞こえた気がしました。
「外は寒いよ。」
 振りかえると、大勢の人が笑顔で手招きをしていました。

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