第44回(2013年)
JX-ENEOS童話賞
【一般の部 優秀賞】

えいさとほいさ作者:福谷博

浅草の大きなお寺のそばに、えいさとほいさが住んでおりました。えいさは、背が低く太っていましたし、ほいさは、背が高く痩せていました。えいさは、おっとり型でしたし、ほいさは、せっかち型でした。
体型も性格もなにかと反対なのに、えいさとほいさは子どものときからとても仲良しでした。 えいさとほいさは、失業しました。失業してすぐ、えいさは、風船売りをしましたがだめでした。ほいさは、おじさんの大工仕事の手伝いをしましたが、これもなかなか思うようになりません。
ふたりは会うたびに、何かいい仕事はないものかと相談しました。そして、お寺の門前で人力車を見て思いついたのが、江戸時代のタクシーすなわち駕籠かきでした。
駕籠は、ほいさが作りました。四手駕籠です。後ろと前には竹の簾を張り、屋根と横のよろい戸は葭簀です。片側の屋根とよろい戸は跳ねあげられるようにしました。
雨のひどいときは困りますが、風通しのよい乗り物です。その上ちょっと工夫して、えいさが見つけてきた古い乳母車の車輪を駕籠の下に取りつけました。
担ぎ棒(轅)は、えいさとほいさの背丈に合わせてクランク型の枝を使ったのです。そのほかに、えいさの希望で、風船を膨らますヘリウムのボンベも積みこみました。子どもたちに、余り物ですが、風船をプレゼントしようと考えたからでした。
春たけなわのある日、ふたりは股引に半被姿で、人力車にならんで門前に駕籠を置きました。客待ちです。通る人たちは、ものめずらしそうに駕籠とふたりを見ながら過ぎていきます。
過去の受賞作品のご紹介

今までの受賞作品をカテゴリ毎に分けて
ご紹介しております。
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楽しい&
元気になる話

楽しいお話、
元気になれる
お話をまとめました。


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心が
あたたまる話

こころがほっこり
あたたまるような
お話をまとめました。


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心にしみる話

心にじんわりしみる
ような、
胸を打つ
お話をまとめました。


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ふしぎな話

ちょっと不思議で
ファンタジックな
お話をまとめました。


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動物が
出てくる話

いろいろな動物が
登場するお話を
まとめました。


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季節の話

春夏秋冬、
四季を感じる
お話をまとめました。



