第46回(2015年)
JX-ENEOS童話賞
【一般の部 優秀賞】

マメさんの傘屋さん作者:川崎紘子

マメさんの傘屋さん

実は、マメさん。おばあちゃんの夫を知っていたのです。
あれは、ひと月ほど前のことでした。
「日傘をくれ。」
ぶっきらぼうにそう言って、七十歳ほどの男性が店に入ってきました。
「妻がずっとボロっちい傘を持っていてみっともないからな。」
しかめっ面の男性が、まったくあいつときたら、なんだかんだと愚痴を言い始めるので、マメさんは聞こえないふりをして尋ねます。
「この店はお客様のお体に合わせて作っておりますので、奥様の背の高さと手の大きさを教えてくださいますか。」
「そんなのは知らん。平均的なばあさんだ。適当に作ればいい。」
男性が怒ったように言うので、マメさんは困ってしまいました。
「背丈も手の大きさも人それぞれですし。」
「融通が利かないもんだな。じゃあ身長はわしの頭三個分小さく、手はわしの手の五センチ小さめで作ってくれればいい。」
知らんと言った割には具体的だな、と思ってマメさんはなんだかうれしくなりました。悪い人ではなさそうです。
「かしこまりました。それでは傘の骨を組み立てるので、布を選んでいてください。」
作業を始めたマメさんに、男性は
「なぜそんなことをせにゃならんのだ。」
とぶつくさ言っていましたが、マメさんが聞こえないふりをするので、諦めて布を探し始めました。
マメさんが傘の骨組みを仕上げて顔を上げると、布を持った男性が作業台のすぐ近くに立っていました。
「あいつの趣味はわからんからな。適当だ。」
そう言いながら差し出した布は、淡い紫色の花柄でした。男性が選んだ柄はおばあちゃんの上品なイメージに本当にぴったりでした。適当に選んだと言いながら、男性はちゃんと妻のことを考えて選んだのでしょう。マメさんはあの男性を思い出しながら、 おばあちゃんと日傘を愉快な気分で眺めました。

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