第51回(2020年)
ENEOS童話賞
【中学生の部 最優秀賞】

紫の紫陽花が咲く日には作者:小川桃葉 / 絵:橘春香

少し間があった。二人でそろって雨の音に耳を澄ます。と、その時彼女は私に話し始めた。

「ねえ、知ってる?紫の紫陽花ってね、よく見ると一つ一つは灰色に近い色をしてるのよ。灰色と紫って案外似てるから。それにね、これから好きなように色を加えられるでしょ。だからね、灰色って素敵だと思うわ、私。」

私は心が晴れていくような快感を覚えると同時に笑っていた。そして、心から言った。

「ありがとう。」

彼女は目を閉じた。私も真似をして目を閉じる。彼女の声が響いた。

「また、六月の雨の日に。」

目を開けると、もう彼女はそこにいなかった。その代わり、一輪の紫陽花が、ちょこんとベンチに腰かけていた。

結局その後、彼女には一度も会っていない。けれど、六月の雨の日、紫の紫陽花を見つける度に、彼女を思い出している。

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