エンマ様は仕事にうんざりしていました。
毎日毎日、生前に悪いことをした人に、
「お前は針山に行け。」
「お前は血の池に行きなさい。」
などと言い、人を裁かなければならないからです。お金がなくて仕方なく物を盗んだ人にお仕置きをするのも胸が痛みます。それに、エンマ様はお母さんが子どもに
「嘘をつくとエンマ様に舌を抜かれるよ。」
と言い、子どもたちに恐れられることも辛く思っていました。そうやって極楽に行く人が増えれば良いのは分かっています。しかし地獄へ来る人は一向に減りません。エンマ様は自分のやり方が正しいのか分からなくなったのです。皆から好かれる仏様を羨ましく思い、自分も皆から慕われる仕事がしたいと思っていました。
そんなエンマ様には夢がありました。いつか風の噂で聞いた地上の美しい紅梅を見ることです。エンマ様は血の池地獄の残酷な赤色しか見たことがありません。ですから自然の優しい赤色をこの目で見たいと思っているのです。
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