ENEOSグループのENEOS Xplora株式会社は、石油・天然ガスの開発・生産事業を展開する一方、成長事業として環境対応型事業を推進し、その活動の拠点として新潟県胎内市に「中条共創の森 オープンイノベーションラボ」(NOiL: Nakajo Open-innovation Lab)をオープンしました。開設に至る経緯や中条事業所とNOiLの施設概要をお届けした前回に続き、今回はNOiLを見学いただいた地域の皆さまの声や、NOiLを運営する石川所長へのインタビューを紹介します。
この記事の目次
NOiLは市内の脱炭素社会実現に向けたキーオフィス
NOiLが「持続可能な未来へ」の実現に向けたキーワードの一つに、「地域との共創」があります。
今後、地元の行政や学校との連携も期待されています。胎内市役所の井川参事と中条中学校の皆さんにお話を伺いました。
2021年にゼロカーボンシティ宣言をした胎内市が目指すゴールは?
市民、事業者、行政が協働して脱炭素社会の実現に向けた持続可能な地域づくりを推進し、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指しています。この取り組みによって、シビックプライド(市民の誇り)を醸成していきたいという願いが込められた宣言です。
ENEOS Xploraとはどのようなつながりがあったのでしょうか
長年ガス事業で市民生活を支えている企業で、貢献度の大きさと地域との強いつながりがあります。
また、ガス供給とともに、「中条の森づくり活動」など、さまざまな形で地域貢献していただいています。最近では、地元の中条中学校への出前授業や新潟日報が主催する円卓会議でもご説明いただくなど、市内の環境教育にも協力をいただいています。
市行政として、NOiLに期待することは?
設備の素晴らしさもさることながら、環境先進企業や行政、大学といった産官学連携の拠点として地域の脱炭素化を推進し、持続可能な地域づくりを担うキーオフィスと考えています。
地域全体が脱炭素社会の目標に向かって一丸となって取り組むためにも、共に実証・検討できる場として活用させていただき、環境について学ぶ機会を設けることに協力いただきたいと思っています。
総合学習「探究」をきっかけに、学校への出前授業やNOiL施設見学を実施
「出前授業」や「NOiL見学」のきっかけは?
森谷(以下敬称略): 総合学習の探究活動をきっかけに、再生可能エネルギーや次世代型エネルギーへの興味が膨らんでいったことから、出前授業を受けてNOiLを知り、見学させていただきました。
見学前後で生徒に変化は見られましたか?
佐藤: NOiLを見学させていただいてから生徒たちのモチベーションがガラッと変わったようです。それは、胎内市のイベントでエネルギー問題を発信・発表した時の行動に表れていました。
学校としてNOiLに期待することは?
石田: SDGsについて学んでおり、物事をSDGsベースで考えることが身に付いていくと思います。生徒たちにとってもNOiL施設があるということは、すごく心強いです。
NOiLとかかわる中で、学校における今後の取り組みやお考えがあれば教えてください
森谷: 生きた学習で社会とつながることが大切で、NOiLに対する期待は大です。
石田: 地域との連携を深めていきたいという思いがありますので、自分たちの身近な課題に気付いて、自分たちで解決の糸口を探す、そして実践していく、そういうことに力を入れていきたいですね。NOiLに協力いただき、探究を重ねる生徒を育成しながら一緒に学んでいきたいと思っています。
佐藤: 出前授業とNOiL見学で感じたのは、企業の地球温暖化に対する覚悟にも似た姿勢でした。生徒たちも、施設見学してSDGsに本気で取り組まなければならないと実感したと思います。
出前授業&NOiL見学で広がるSDGsの理解
「出前授業」を受ける前、ENEOSは知っていたものの、新潟県で石油・天然ガスが生産できることも中条事業所やNOiLのことも知らなかったという生徒さんたちに、環境問題への思いを聞きました。
NOiLの施設を見学して、環境について学んだことや感想は?
野沢(以下敬称略): 地元にスーパーエコな施設があることに驚きました。
しかも施設が木造で、新建材を使っていないのは素晴らしいです。
阿部: 同じ印象で、ここまで環境を考えて作られていることに感心しました。
相沢: 木材使用や太陽光発電など、環境への配慮がすごいと思いました。建物に入ったときの、木の香りも好きです。
飯沼: 再生可能エネルギーが環境にも経済的にも優れていると知りました。
猪俣: 再生可能エネルギーで走る車があることを知ってびっくりです (編集部注: NOiL構内の太陽光発電の余剰電力を活用した電気自動車のこと)。
学んだことで、自分の将来に関わりがありそうなことはありましたか?
相沢: SDGsの17の目標で、食品ロス削減やバイオマスエネルギーなら、自分の食卓でもできると思い、小さいことから気をつけたいと思います。
飯沼: 太陽光パネルの設置を考えてみたいです。
野沢: 自宅でも太陽光パネルの設置などなら環境対策ができると思いました。
阿部: 同意見で、環境を考えた生活をしようと思います。
猪俣: 将来家を建てることになったら、太陽光パネルは付けたいと思います。
見学後にご自身のことで何か変化はありましたか?
阿部: エネルギーを無駄遣いしないようにしたいと思います。
相沢: 省エネや環境保護って、身近なことから取り組まなければならないと知りました。
飯沼: 生活を見直せば、もっとエネルギー節約ができそうです。
猪俣: 市の取り組みを学んで関心を持つようになり、今は電気を小まめに消すようにしています。
野沢: ゴミをできるだけ少なくして、環境に配慮するようになりました。
中学校を卒業する5人の生徒さんに、環境問題でいま最も関心のあるテーマを聞いたところ、そろって「SDGs」「マイクロプラスチック」「地球温暖化」との回答。これからのサステナブルな環境づくりを託せると期待が持てます。
共創でイノベーションを起こし、新しい価値創出を目指す
NOiLは、「共創」の名が示すように、さまざまな分野と環境をテーマに「新しい付加価値を共に創る」ことを目指しています。ゼロから新しいものを創るだけではなく、既存の技術や別のシステムの組み合わせによるイノベーションを起こしていくことも求められています。
環境対応型事業を推進するNOiLの戦略や将来構想・展開を、石川所長に聞きました。
NOiLの機能について教えてください
NOiLには、視察を受け入れ、当社のこれまでの環境への取り組みをPRする「広報」の機能、そして環境事業の「実証拠点」という2つの機能があります。
「ラボ」という名は付いていますが、実験施設ではなく、多くの方に参集いただいてディスカッションする「場」として活用いただくことを目的としています。
カーボンニュートラル実現に向けたNOiLの取り組みは?
提案や実証実験、また地域・他者との共創によって、下図のような展開をしていくのが将来的な姿です。
そのためにも、産官学連携はもちろんのこと、多方面に対して働き掛けを始めており、実証実験に向けたディスカッションを進めているところです。
この共創の動きを活発化していくことで、環境対応構想図の完成が近づくと考えています。
地域の拠点としてアピールできることは?
胎内市や新潟県のカーボンニュートラルに貢献するように実証実験を行い、その取り組みを、全国や海外に展開できたらとてもうれしいです。
新潟県、胎内市からの発信で、「すごい取り組みしている」や「私たちもやってみよう」という声が、全国レベルで高まり、ゆくゆくは海外にまで広まっていけば、大きなやりがいにつながります。
このような大きな構想は、当社だけでは実現出来ません。既存事業では共同で事業をしたことのないような方々とも、一緒に創っていきたい、という想いから、NOiLの表記に「共創の森」という言葉を入れている次第です。
将来構想や展開、NOiLだからできることなど、所長としての考えをお話しください
まずは第1号の実証案件を立ち上げて、広くお披露目していくのが直近の目標です。
NOiLを拠点に、産官学幅広い分野の多くの方々と議論を重ね、アイデアを形にいろいろな方々と共創してイノベーションを起こし、地域のカーボンニュートラルに貢献していきたいです。
NOiLへのアクセス
新潟県胎内市村松浜1873