私たちの身の回りにあるたくさんの石油製品は、全て製油所で作られています。ENEOSの中核を担う事業である製油所に関して、本記事では2025年に節目を迎えた3つの製油所(川崎・堺・鹿島)の特徴や安全対策などについて、各製油所にゆかりのある製造部の岩田さん、坂部さん、栁さんにお話を伺いました。
この記事の目次
川崎・堺・鹿島製油所の特徴

―それぞれ長い歴史がありますが、各製油所に違いや特徴はありますか?
岩田さん:はい。設備や立地における特徴など、製油所ごとに個性があります。川崎製油所から順番にご紹介していきますね。川崎製油所は1960年に操業を開始し、2025年に操業65周年を迎えました。川崎製油所の特徴は、「日本最大級の石油精製能力」と、「日本最大級の流動接触分解装置(FCC)」を所有している点です。
―「石油精製能力」とはなんでしょうか?
岩田さん:簡単に言うと、「1日に処理することができる原油※の量」です。川崎製油所では、1日に最大24万9,100バレル(1バレルはお風呂1杯分で、約159リットル)の原油を処理することができ、これを皆さんに身近な25mプールに例えると、25mプール約73杯分もの原油を毎日処理していることになります。
※原油とは、ガソリンや灯油などの石油製品の元になる物質です。詳しくは「製油所ってどんなところ?<製油所の役割編>」でご紹介しています!
―ものすごい量の原油を1日で処理しているんですね!「日本最大級の流動接触分解装置(FCC)」についても、詳しく教えてください。
岩田さん:まずFCCがどんなものかと言うと、「価値の低い石油製品を、価値の高い石油製品に変える装置」です。製油所で作られる様々な石油製品のうち、最後に残って出てくる重油はアスファルトのようにドロドロとしていて、使い道が限られてしまいます。そこで、ガソリンや軽油のように使用用途も多く価値の高いものへと変えるこの装置が活きてきます。FCCは、重油を高温で触媒(化学反応を助ける性質)と混ぜて分解させ、ガソリンやプロピレン(プラスチックの原料)などに生まれ変わらせることができるのです。日本最大級を誇る川崎製油所のFCCは、1日あたり最大9万2,000バレルの重油を処理することができ、これは先ほどの25mプールに換算すると、1日で約58杯分に相当します。
―より需要の高い石油製品を作り出せる、優れた装置なんですね!

―次に堺製油所の特徴を教えてください
坂部さん:堺製油所は1965年に操業を開始し、2025年に操業60周年を迎えました。ENEOSは、ペットボトルやポリエステル衣服のもとになる物質であるパラキシレンを年間301万トン供給しており、アジア第1位の供給力※を有していますが、そのうち約22万トンを堺製油所で製造しています。さらに、堺製油所の特徴としては「世界トップクラスのエネルギー効率」という点も挙げられます。これはつまり、少ない燃料でたくさんの石油製品を作り出す能力があるということです。
※2024年6月末時点(外販量ベース)
―どのように世界トップクラスのエネルギー効率を実現しているのですか?
坂部さん:製造工程の途中で一時的に製品を保管する半製品タンクというものがあるのですが、堺製油所は他の製油所に比べその半製品タンクが少なく、装置間の熱融通を積極活用した製油所として建設されました。通常、石油製品を作る各装置は独立しており、製造工程において装置から装置へと製品を移す際には、一度冷却をして半製品タンクに溜め、再度加熱炉で加熱してから次の装置で処理することが一般的です。しかし、堺製油所は装置間の半製品タンクが少ないため、再加熱が不要となっています。さらには、各装置で発生した排熱を有効利用することで加熱炉の数も最小限に抑え、結果、燃料の大幅削減を実現しているのです。

―燃料を削減することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
坂部さん:燃料を燃やす時には、地球温暖化の原因である二酸化炭素が発生します。再加熱が不要になれば二酸化炭素の排出量が削減できるため、環境への負荷を減らすことにつながります。製油所完成当時から省エネルギーの特色が強く、その考えが脈々と受け継がれているのを今でも感じます。
―堺製油所は環境にやさしい製油所なんですね!

―次に鹿島製油所についても教えてください
栁さん:鹿島製油所は1970年に操業を開始し、2025年に操業55周年を迎えました。鹿島製油所の特徴は、「鹿島コンビナートの中核」を担っている点です。コンビナートとは、工場がたくさん集まり、それら一体がパイプラインで繋がっている工業地帯のことです。原料や製品をパイプラインで直接届けることでタンクローリーやトラックによる輸送が不要となり、工場がより効率的に生産活動を行えるというメリットがあります。鹿島製油所ではプラスチックの原料になるナフサなどの産業用製品を周辺の工場へ送っています。
―地域産業の生産活動を支える重要な存在なんですね!
栁さん:それと、国内でも珍しく溶剤脱れき装置を有しているのも特徴の一つです。これは先ほど川崎製油所の時に紹介したFCCと同じように、重たく価値が低い油を価値が高い油に変えるための装置で、この装置で生産した素材を燃料として、電力事業も行っています。そういった意味では鹿島製油所は「価値が低いもの」の価値を高めて、有用な燃料をつくっていくことに長けている製油所だと思います。
―各製油所には、優れた装置や環境負荷の低減、地域産業との連携など個性豊かな魅力があるんですね!

各製油所の安全・環境対策
―上記のほかに、各製油所で安全や環境に配慮した取り組みは行っていますか?
栁さん:安全面においては、どの製油所でも、「誰もケガをしない、させない」「設備の事故撲滅」を目標に、安全対策を徹底しています。現場では、体を保護する装具の着用を義務づけたり、作業開始前にはどのような危険が潜んでいるか想定する・許可を取ってから作業を行うなどの安全ルールがあったりします。どの製油所でも万全の対策を取っていますが、それぞれ“地域”によって異なる面も少しあります。
―地域それぞれで変わってくるということですか?
川崎製油所
岩田さん:例えば、川崎製油所の場合は、埋立地につくられたというのもあり水分を含んだ地盤に建っています。そこで、地下水を汲み上げて地盤を強固にするという取り組みを行いました。そのため、東日本大震災の際には、近隣の埋立地は液状化が多発しておりましたが、川崎製油所の被害はかなり限定的でした。さらに、その震災を受けて、万が一の時にも供給能力を保持できるように出荷設備の強化も行なっています。
堺製油所
坂部さん:堺製油所でも、大規模な地震の対策として、川崎製油所と同じように地盤を強固にした液状化対策をしています。また2023年には事務所建替えを実施し全面フリーアドレスを導入するなど、より近代的な職場環境とすることで職員もより気持ちよく働けるようになりました。
鹿島製油所
栁さん:鹿島製油所でも東日本大震災以降、安全対策をさらに強化しています。防災訓練でも火災だけでなく、地震により津波が起こってしまったシナリオがあり、その内容も見直されています。現場の人たちはいつまでに何をするのかなどの行動の流れが定まっていて混乱が無いよう工夫されていたり、想定する津波の高さもかなり高い設定で行なったりしています。
―徹底した防災対策を行っているんですね!環境面についても教えてください。
川崎製油所
岩田さん:川崎製油所では海に水を排出する前に特殊装置で油や泥を処理することで、水質汚濁の防止を徹底しています。また、大気汚染の原因となる物質を取り除く装置を活用して、公害防止にも取り組んでいます。これらの水質や有害物質の排出データは、川崎市の監視室にリアルタイムで送られます。地域の皆さまに信頼していただける製油所として、今後も徹底した環境対策に努めてまいります。
堺製油所
坂部さん:大阪府は環境規制が特に厳しいというのもあり、堺製油所でも地域の皆さんに安心していただけるよう環境に関する様々なデータを市に送っています。ほかには、世界トップクラスのエネルギー効率を誇る製油所として、やはり省エネには力を入れています。製油所の管理部門では、エネルギー使用量を厳しくチェックしながら使用量削減にむけたディスカッションを活発に行っています。環境負荷の低減に向けて、今後も積極的な環境対策に取り組んでまいります。
鹿島製油所
栁さん:鹿島製油所も川崎・堺と同様、水質・大気の環境に負担を掛けないために、排水や排ガス中の有害物質を監視し、規制値を超えないよう運転しています。他の具体例としては、環境規制を超えていないか検証するため、製油所が運転しているときに特定箇所のサンプルを取って、どんな成分が含まれているかの調査もしています。もちろん、鹿島製油所でも同様に環境に関するデータを市に送ることで、地域の皆様にも安心していただけるよう努めています。
―どの製油所も安全・環境対策を徹底して、地域の方が安心できるよう情報公開までしているんですね
地域とのつながり
―長い歴史のある各製油所ですが、地域の方と交流する機会はありますか?
岩田さん:どの製油所も、地域に根ざした活動を積極的に行っています。川崎製油所では、自衛消防隊が使う大型消防車に乗ることができたり、釣り大会や移動水族館などが楽しめたりする「ENEOS子どもフェスティバル」が人気です。
坂部さん:堺製油所では、「ENEOS友好の森活動」という取り組みを行っています。これは、地域の方や行政と連携して森林保全を行う活動です。具体的には、大阪府にある放置された森林の手入れを行い、森を再生して守っていく取り組みです。森を育てることは地球温暖化の原因である二酸化炭素を吸収することにつながるので、製油所の外でも環境対策に貢献できるよう努めています。
栁さん:鹿島製油所では、神栖市で行なっている鹿島灘海岸の清掃活動に毎年参加しています。ほかにも、製油所の見学会や職場体験を行なったりもしています。実際に、製油所にある巨大な装置や職場を家族や子どもに見てもらえるので、大変良い機会です。こういった活動は継続して取り組んでいきたいです。
―製油所の取り組みを知ってもらうイベントや、社会貢献活動にも積極的なのがよく分かりました

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製造部プロセス技術グループ 岩田 祐一
2008年 東燃ゼネラル石油株式会社(現ENEOS株式会社)に入社し、川崎製油所システム技術課(当時)に配属。約5年間高度制御担当エンジニアとして運転改善に従事。その後、和歌山・川崎で需給管理業務を経験し、2023年より本社製造部所属。現在はプロセス技術グループにて各所への高度制御導入を担当。

製造部操業管理1グループ 坂部 浩樹
2017年 JXTGエネルギー株式会社(現ENEOS株式会社)に入社し、堺製油所製油技術グループに配属。堺製油所/本社にて約8年間、高度制御エンジニアとして仙台/千葉/川崎/堺/水島/和歌山製油所の装置の運転改善に従事。2025年4月より、製造部操業管理1グループへ異動。現在は製油所電源の取りまとめを担当している。

製造部操業管理1グループ 栁 明宏
2014年 JX日鉱日石エネルギー株式会社(現ENEOS株式会社)に入社。鹿島に7年、堺に4年勤務し、プロセスエンジニアとして蒸留・脱硫・FCCなど石油精製装置の安全性向上・運転改善・設備改造などに従事。2025年4月より現職場に異動。現在は、製油所全体の稼働率向上に関する各種施策を取りまとめている。
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まとめ
川崎・堺・鹿島製油所はそれぞれの強みを活かしつつ、安全・環境対策を徹底した運営を行っています。また、地域の方に製油所をより深く知っていただくイベントなども積極的に開催し、交流を深めています。今後も、みなさまの快適な暮らしを支える製油所として、さらなる発展に努めてまいります。


