環境課題に取り組む発電所<2025年度環境安全フォーラムレポート 第3回>

ENEOSでは、グループ全体が一丸となって安全・環境対策を推進するために、毎年「環境安全フォーラム」を開催しています。2025年度は11月26日に開催され、安全対策に関する特別講演や展示会のほか、ENEOSバイオマスパワー室蘭合同会社における、環境課題への取り組みに関する発表が行われました。最終回である本記事では、その発表内容についてご紹介します。

この記事の目次

ENEOSバイオマスパワー室蘭合同会社の誕生

植物などから生まれたバイオマス資源は、燃焼時にCO2を排出しますが、その植物の成長過程でCO2を吸収しているため、地球環境にやさしいカーボンニュートラルな資源です。2016年10月に設立されたENEOSバイオマスパワー室蘭合同会社が運営する「室蘭バイオマス発電所」は、バイオマス資源の一種であるパーム椰子殻を使用した電力を供給しており、パーム椰子殻専焼の発電所として国内最大級の規模を誇ります。(発電電力:74,900kW、年間発電量:約6億kWh
※約6億kWh/年は、一般家庭の約13~14万世帯分の電力を賄える発電量

バイオマス発電とパーム椰子殻について

バイオマス発電は、上述したカーボンニュートラルという特徴だけでなく、太陽光や風力と異なり燃料を保管できるため、天候や時間帯に左右されず安定的に電力を供給できるという特徴があります。

バイオマス発電

バイオマス発電とは、木くずや間伐材、家畜のふん、木の実の殻といった、今まで捨てられていたものを燃料として、燃焼またはガス化することで発電する方法です。廃棄されていたものを再利用できることから、バイオマス発電は持続可能な循環型社会に大きく貢献しています。

 パーム椰子殻

パーム椰子とは、東南アジアなどの暖かい地域で育つ椰子の木の一種であり、その木の実の殻のことをパーム椰子殻と言います。パーム椰子からとれるパーム油は、チョコレートや石鹸など、私たちの身の回りの様々な製品に使われています。パーム椰子殻は、以前はそのまま捨てられていましたが、硬く、乾燥しているという性質から、他のバイオマス燃料よりも少量で多くの熱を生み出せる重要な資源になりました。
なお、ENEOSバイオマスパワー室蘭は、持続可能な取引の国際基準であるGGL認証※を取得しています。この認証により、パーム椰子殻が持続可能な燃料であることを証明し、サプライチェーン全体の健全性を継続的に維持しています。
※GGL認証:調達されたバイオマス燃料の製造、加工、輸送、最終利用までの過程を網羅的に追跡・記録し、持続可能性を保証する国際的な第三者認証制度

室蘭バイオマス発電所の環境課題

バイオマス発電は地球環境にやさしい発電方法ですが、燃料を保管するタイミングと、発電するタイミングで大きく3つの環境課題がありました。

(1) 粉塵
海外から調達され、船舶で運ばれたパーム椰子殻は、室蘭バイオマス発電所に隣接する埠頭に荷揚げされ、燃料置場までコンベアで運ばれます。その過程において、燃料を投下したり山積みしたりする際に発生する粉塵が防塵用のフェンスを超えて飛散することもあり、その対策が課題となっていました。

(2) 臭気
パーム椰子殻には、主にインドネシア産のデュラ種とマレーシア産のテネラ種があります。取り扱うパーム椰子殻によっては臭気が強いものもあり、地域住民から問い合わせを受けることもありました。その後、対策を進めていくなかで、テネラ種の方が臭気が強く、粉塵も多いという傾向が分かりました。

(3) 産業廃棄物
室蘭バイオマス発電所で発生する産業廃棄物の9割以上は、燃料を焼却した際に発生する燃焼灰です。運転を開始した当初は燃焼灰を再資源化する処分会社が少なく、処分会社の受入が難しい場合には埋立処分をするしかありませんでした。また、処分会社へ燃焼灰を運搬する貨物列車の運休時にも埋立処分を余儀なくされ、発電所の運転開始当初は、埋立処分率(最終処分率)が50%を超過していました。

パーム椰子殻を焼却した際に発生する燃料灰

室蘭バイオマス発電所の環境課題への取り組み

上記の3つの課題への対策として、ENEOSバイオマスパワー室蘭では、パーム椰子殻の調達から発電後の過程で様々な取り組みを行ってきました。

(1)粉塵対策
劣悪品の多い品種の調達を避け、品質の良いインドネシア産のパーム椰子殻を優先的に調達しました。

(2)臭気対策
社員が発電所周辺を毎日パトロールし、臭気等の異常を感知したら直ちに作業を中断します。そのほか、室蘭市環境課を定期訪問し、臭気パトロール結果や市民からの苦情の有無を報告するなど、地域と連携した取り組みも行なっています。

(3)産業廃棄物対策
産業廃棄物としての埋立処分の削減および再資源化の拡大に向けて、再資源化する協力会社を新規開拓しました。また、臨時貨物列車やトラックによる運搬も開始しました。その結果、発電所の運転開始当初50%を超えていた埋立処分率(最終処分率)は1.1%(2024年時点)まで削減でき、処分費用の削減にもつながりました。

まとめ

室蘭バイオマス発電所では、徹底した品質管理と地域連携で粉塵・臭気対策に取り組み、2023年6月以降、地域の方から問い合わせをいただくことはほとんどなくなりました。また、燃焼灰の再資源化を推進することで産業廃棄物の最終処分率の大幅削減を実現し、現在も最終処分率1.0%未満に向けて取り組みを続けています。
ENEOSバイオマスパワー室蘭は、これからも環境に配慮した運営を徹底するとともに、地域の皆様に安心・安全をお届けできるよう努めてまいります。