ENEOS VOICE 第3回(後編) AIによる業務革新!タンカー輸送の頭脳「原油配船」
ENEOS VOICE 第3回(後編)では、ENEOSはなぜ「AI」を積極活用しているのか?や原油配船の未来についてAIイノベーション部・データサイエンスグループ・チーフスタッフの帯刀 賢太(たてわき けんた)さんがお話ししました。
近年、様々な生活の場面でAI(人工知能)の技術に触れる機会が増えています。そこで、ENEOSグループの誰もがAIを活用できるように、2025年6月にENEOSホールディングス株式会社内に「AIイノベーション部」が創設されました。この「AIイノベーション部」が推進する3つの先端プロジェクトについて、ニッポン放送の朝の顔、ラジオパーソナリティの上柳昌彦さんによる担当者へのインタビューを全3回シリーズでお届けします。
※「ENEOS VOICE」は、音声でENEOSグループの事業やビジョンなどをお伝えするコンテンツです。文字を読むのはちょっと…という方もお気軽にぜひお聴きください。
この記事の目次

ENEOSはなぜ「AI」を積極活用しているのか?

上柳:ENEOSがいち早く「AI」を導入できた背景には何があるのでしょうか。
帯刀:原油配船業務の詳細を知る供給計画部と、AI開発を得意とするAIイノベーション部が、垣根無く密に連携し、一丸となってプロジェクトを推進できたことが大きいと考えています。
上柳:石油業界のAIに対する考え方をお聞かせください。
帯刀:ChatGPT(チャットジーピーティー)など生成AI自体の開発には多額の資金が必要で、アメリカや中国が先行しています。一方で、生成AIや予測AI、数理最適化等を組み合わせて高度に使いこなして事業に適用する面では、まだどの国、どの企業も横一線であり、ENEOSもその最前線を担っていると考えています。
上柳:石油業界ならではのメリットはありますか。
帯刀:石油業界は国の基盤を支える大規模かつ複雑なサプライチェーンを持つため、AIによる効率化の恩恵が非常に大きいと認識しており、ここにAIを高度に適用することで前例のない規模の効率化が実現できると考えています。「ENEOSの規模でAIを高度に使いこなしている!」という成功事例によって、石油業界から日本全体を元気づけられることを願っております。
上柳:いち早く「AI」モデルによる配船を活用したことで、ENEOSにもたらされたメリットや優位性はどのような点でしょうか。
帯刀:現在、世界的に生成AIのブームが到来していますが、その波に乗れる基盤を整えられたことが大きなメリットだと考えています。生成AIは、システムや他のAIを人に代わって高速・連続実行することや、より高度な意思決定を実現することが期待されています。ENEOSがいち早く数理最適化AIを原油配船業務へ導入したことで、今後はさらなる相乗効果を期待しています。
上柳:この効率化によって、私たちが車に乗る際のメリットはあるのでしょうか。
帯刀:AIによりサプライチェーンの効率化が進んだことによって、ガソリンなど石油製品の品質維持や安定供給を継続できるため、これが直接的にお客様や社会への貢献につながります。原油配船の最適化だけでなく、製油所での精製、サービスステーションや需要家様への運搬も含め、長いサプライチェーン全体での商品・サービスの安定供給をAIによって実現していきたいと考えています。
上柳:AIの活用によって原油配船はどのような方向に進むと考えていますか。
帯刀:まずは、本件のようなAI―すなわち、人間がデータを集めてボタンを押せば、高速かつ高度な計画策定ができるAIが普及していくと考えています。将来的には、データ収集やボタン操作、結果確認すらも不要な「自律的AI」に進化し、計画策定AIとデータ収集AI、分析AIが連携し、人を介さず配船計画が立案される仕組みが浸透すると考えています。
上柳:帯刀さんご自身として今後どのようなことに取り組みたいと考えていますか。
帯刀:自律的に動作するAIシステムの開発に大変興味を持っており、今後はこの領域に注力したいと考えています。また、世界中でAIの研究・開発は進んでいますが、ENEOSのような大規模かつ複雑なサプライチェーンに高度なAIを活用した例はまだなく、最前線で取り組み、エネルギー・環境問題の解決に寄与したいと考えています。
※2025年8月時点ではプレスリリース上、ENEOSのような大規模かつ複雑なサプライチェーンに、数理最適化とAIを組み合わせて実務適用した例はないと認識しています。

まとめ
ENEOSは、複雑で大規模な石油サプライチェーンを効率化するため、いち早くAIを導入。供給計画部とAIイノベーション部の連携により、原油配船の最適化を実現しました。これにより安定供給や品質維持が可能となり、さらに生成AI時代に対応できる基盤を確立。将来的には、自律的AIによる人を介さない完全自動化の配船計画が立案される仕組みが浸透すると考えられています。
「AIイノベーション部」インタビューシリーズの最後に
ENEOSは2025年6月に「AIイノベーション部」を設立し、先端技術を事業に積極的に導入しています。このインタビューシリーズでご紹介したプロジェクトは、材料開発を革新する「Matlantis(マトランティス)」、蓄電池を活用した需給最適化システム「EMS」、そしてタンカー運航計画を効率化する「原油配船AI」です。
Matlantisは原子レベルで特性を予測し、従来の数万倍の速さで計算を可能にします。すでに国内外100社以上が利用し、触媒や新素材の研究開発を加速させています。EMSは発電量や市場価格を予測し、室蘭などで実運用されています。再生可能エネルギーの変動にも対応し、内製化によって制度改正や市場変化に柔軟に対応できています。原油配船ではAIによって高精度かつ迅速な計画策定を実現し、燃料費削減や安定供給に貢献しています。これらの取り組みにより、ENEOSはエネルギー供給の効率化と持続可能性を両立させていきます。



