申教授が考える「安全活動」とは? <2025年度環境安全フォーラムレポート第2回>

2026.1.21
製油所
ENEOS 環境安全部

ENEOSでは、グループ全体が一丸となって安全・環境対策を推進するために、毎年「環境安全フォーラム」を開催しています。今年度は11月26日に開催され、グループ全体での取り組みの共有のほか、安全行動調査の専門家である申教授の特別講演と、ENEOSグループ主要事業会社の代表者によるパネルトークセッションを実施しました。本記事(第2回)では、その講演の概要とトークセッションの様子をご紹介します。

この記事の目次

個人と組織の安全活動について考える -申教授 特別講演

グループ全体で安全対策を推進していくにあたっては、個人や組織の多様化を踏まえた安全活動へのアプローチが重要であると考えています。そこで、今回、安全心理学や産業心理学を専門とする申教授に安全意識のアップデートについてご講演いただきました。

申 紅仙教授
常磐大学人間科学部心理学科 教授
公認心理師、1級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)、産業カウンセラー、認定人間工学専門家、専門社会調査士

現場で事故が起きる2つのメカニズム 〜不安全行動とは?〜

一般的によく言われる「ヒューマンエラー」とは、外的要因や内的要因によって発生する、“本人の意図に反した過失”のことを指します。分かりやすく言うとうっかりミスです。対して、慣れや過信などが背景にあり、“意図的に安全対策を怠る行為”を、「不安全行動」と呼びます。たとえば、歩きスマホや滑りやすい靴を履くという行為などがこれに該当します。
この「不安全行動」がヒューマンエラーと重なってしまうと事故が巨大化する傾向にありますが、ヒューマンエラーを完全に無くすことはできません。そのため、もしもの事故を最小限に抑えるためにも、不安全行動をいかに起こさないかの工夫が大切なのです。
「個」と「チーム」それぞれで不安全行動を防ぐためにできることと、講演での質疑応答を一部抜粋してご紹介します。

個で取り組む安全

① 指差し呼称
作業前にワンクッション置くことで、注意の減弱を防ぎます。
② エラー傾向・パーソナル傾向を把握
事故につながりやすい自身の傾向を把握することで、適切な対策が可能になります。

チームで取り組む安全

① 「気づき」の教育
経験値の浅い社員に対して、データや事例をもとに自分で危険を認知できるよう教育します。
② 世代・役職ごとの効果的なアプローチ
若者には、科学的根拠を用いて納得感のある教育を心がけます。一方、熟練者には自分の背中を見て後輩が育つという意識を植え付けることが重要です。
③ 「心理的安全性」が保たれた環境づくり
信頼関係の構築が、危険リスクに対する報告や相談のしやすさにつながります。

質疑応答

Q.若者とコミュニケーションをとるうえでのコツはありますか?
A.「君はこういうところがいいよね」とポジティブに入ることが大切です。また、「大変だったね」「一緒に考えよう」といったような寄り添う姿勢も、信頼関係の構築につながります。安全への取り組みに対しては、積極性と持続性を高めるため、本人がしっかりと「腹落ち」することを念頭に置きましょう。そのためには、先に答えを言うのではなく、自分で考え、気づかせるという過程が大切です。

Q.安全対策のマンネリ化を防ぐにはどうしたらよいですか?
A.安全対策をどのように伝えるか、そのやり方をアップデートすることが大切です。より記憶に残る教育方法を探ったり、形骸化の危険を共有したりするなど、対策の中身だけでなく伝え方もアップデートすることでマンネリ化を防ぐことができます。

現場の安全活動について考える -ENEOSグループ主要事業会社の代表によるパネルトークセッション

(左から)申教授、司会:昆野さん(ENEOSホールディングス㈱ 環境安全部長)、パネリスト:江田さん(ENEOSリニューアブル・エナジー㈱ HSE※1統括部長)、髙本さん(ENEOS Power㈱ 発電部長)、中島さん(㈱ENEOSマテリアル 環境安全品質保証部長)、村上さん(ENEOS Xplora㈱ HSSE2部長)、五内川さん(ENEOS㈱ 環境安全部長)

※1 HSE:Health(衛生)、Safety(安全)、Environment(環境)の略。
※2 HSSE:Health(衛生)、Safety(安全)、Security(危機管理)、Environment(環境)の略。

申教授による特別講演後、ENEOSグループ主要事業会社の代表者5名と申教授によるパネルトークセッションが行われました。本セッションでは、現場の安全対策に対する意見交換が行われ、今後の取り組みに向けた各自の決意表明も発表されました。

議題①「安全の対義語」

まずは、「安全」について逆の視点から議論を深めるために安全の対義語をあげてもらいました。各パネラーからは、安全に対して「無関心」であることや、「他人任せ」で何もしない姿勢が組織の安全性を下げるといった意見が挙がりました。それから、経験値や安全に対する目線がバラバラな状況のなかで、どのように安全意識を醸成するかといった現場レベルの課題を挙げて、申教授からアドバイスをいただく場面もありました。

議題②「申教授に聞きたいこと」

これまで多種多様な産業分野で講演や教育を行ってきた申教授に対して、パネラーからは現場の課題をもとに様々な質問が寄せられました。

髙本さん:経験の浅い社員から熟練者までいる現場での「効果的な安全教育」についてお聞きしたいです。
申教授:若者へは、取り組みをただ教えるのではなく、納得感のある説明で理解してもらうことが大切です。気軽に話せるバディの存在や、ポジティブなコミュニケーションも前向きな安全意識の醸成に役立ちます。熟練者へは、学ぶこと自体の抵抗感や負担をなくすことが、安全意識をアップデートする第一歩になります。

中島さん:安全教育を行う効果的なタイミングはありますか?
申教授:自分ごととして捉えるきっかけになるタイミングが効果的です。たとえば、現場でヒヤリハットやミスが起きたときに注意で終わるのではなく、改めて安全対策を確認することで、その後の不安全行動も大幅に減少します。

江田さん:元請けと下請けの施工体制において、ともにできる安全対策はありますか?
申教授:対策の一つとして、事故が起きない仕組みづくりが挙げられます。たとえば、ヘルメットや作業服を色分けすることで、互いの意識を高めることができます。また、監視ではなく、お互いを「見守る」というポジティブな視点をもつことも重要です。

五内川さん:AIによって、うっかりミスを事前に防ぐことはできますか?
申教授:現在はまだ難しいと思いますが、今後、モニタリングなどで事前に知らせる仕組みなどができる未来もくるかもしれません。

村上さん:安全対策におけるリーダーシップについてお伺いしたいです。
申教授:現場の声を積極的に聞き、反映させる風土をつくることが大切です。そうすることで、危険(事故)リスクを未然に防ぐことができます。また、組織や活動状況を定期的に見返したり、みんなで立ち止まって確認するシステムをつくったりすることも大切です。

議題③「決意表明」

特別講演とトークセッションで安全に対する理解を深めた上で、パネラー5名が今後の安全対策に向けた決意表明をキーワードで発表しました。

江田さん:「腹落ち」社員一人ひとりが腹落ちする教育によって、組織の安全を実現させる。
髙本さん:「腹落ち=感情+理屈=行動変化」理屈ではなく相手の気持ちを大切にすることで、安全対策への行動も促していく。
中島さん:「やり切ります」みんなが守れるルールをつくり、一人の落伍者も出さずに現場の安全を守る。
村上さん:「自分ごと」HSSE部としても掲げているこのビジョンによって、安全文化を醸成する。
五内川さん:「ココロと熱量」熱量をもって本気で伝えることで、心が通じ合うコミュニケーションを生み出す。

トークセッションの最後は、自分自身で最後までやりきる「ラストマン」の姿勢が、個人と組織の安全活動に重要であるという申教授の言葉で締め括られました。

まとめ

今回の特別講演とパネルトークセッションを受け、個人と組織の観点から安全対策の理解を深めることができました。ENEOSグループは、今後も、社員や地域の皆さまに安心・安全をお届けできるよう、安全対策の知識と取り組みをアップデートし続けてまいります。