ENEOSの大阪・関西万博での取り組み『未来の燃料 合成燃料を提供』
ENEOS株式会社(以下、「ENEOS」)は、カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)を起点とした合成燃料の製造技術開発に取り組んできました。合成燃料はCO2と水素から人工的に作られる液体燃料で、原料製造から製品利用までの製品ライフサイクル全体においてCO2排出量を抑えることのできるカーボンニュートラル燃料として、社会の温室効果ガス排出削減への貢献が期待できます。この合成燃料をENEOS中央技術研究所内の実証プラントで一貫製造し、2025年日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」)開催期間中(2025年4月13日(日)から10月13日(月)までの184日間)に、駅シャトルバス(以下、「万博シャトルバス」)や来賓・関係者車両に提供しました。
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大阪・関西万博で合成燃料を提供
合成燃料軽油を使用した万博シャトルバスの運行は国内初※の試みでしたが、パートナー企業である西日本ジェイアールバス、日野自動車との相互連携により実現し、万博シャトルバスの万博開催期間における総走行距離は約25,000km(大阪・関西万博会場から東京のENEOS本社までを約25往復する距離)に及び、多くの皆さまに未来の燃料が導くカーボンニュートラル社会を体験いただくことができました。
また、万博シャトルバスへ供給する合成燃料軽油は、徐々に普及する将来の社会形態を考慮し、万博開幕当初の低濃度から段階的に濃度を引き上げて終盤にはついに100%合成燃料軽油による走行を達成しました。
大阪・関西万博での取り組みは、合成燃料の社会実装に向けた大きな進歩であり、エネルギーの安定供給とカーボンニュートラル社会の実現との両立をリードするENEOSの姿勢を示すものとなりました。

合成燃料のメリット(そもそも合成燃料とは?)

再エネを起点とした合成燃料は「再エネ由来の水素」と「産業排ガスや大気から回収したCO2」を原料として製造します。燃料を燃焼する際に排出するCO2を原料として回収するため、製品ライフサイクル全体においてCO2排出量を抑えることができ、社会の温室効果ガス排出削減に貢献することができます。
加えて、合成燃料は既存の石油製品に非常に近い成分で構成されているため、製油所設備、燃料の流通インフラおよび自動車や航空機等について全て既存のものをそのまま使用できる利点を備えています。製造コスト低減と安定供給できる技術の確立や製造効率の改善というが課題がありますが、合成燃料は社会の温室効果ガス排出削減に貢献することが期待されるカーボンニュートラル燃料です。
実験室規模から実証プラントへのスケールアップ

ENEOSはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金」の支援の下、2022年度よりスケールアップ実証に着手、2024年6月には1日当たり1バレル(約159リットル)の製造能力を持つ実証プラントを中央技術研究所内に完成させ、同年9月より実証運転を続けています。このプラントは、水素の製造からCO2供給、それらを原料とした逆シフト反応による合成ガスの製造、さらにその合成ガスを原料としたフィッシャー・トロプシュ(FT合成)反応による合成粗油(人工的な原油)の製造、そしてアップグレーディング(製品化工程)までを一貫して合成燃料を製造できる国内初の設備です。原料に用いる水素は再エネ電力を用いた水の電気分解によって製造しており、これも合成燃料の製造においては国内初の取り組みです。CO2は工場の排気から回収するほか、DAC(Direct Air Capture)設備によって大気中から直接回収したものを使用しています。
ENEOSは、カーボンニュートラル化の議論が本格化する以前から合成燃料製造技術の研究に着手し基礎研究・開発を進め、原料から高収率・高効率に製品を得るための触媒・プロセス開発やスケールアップ技術検討、プラントの運転管理、その全てで試行錯誤を繰り返し、技術を磨き上げました。これらの技術を結集することで、1日当たりわずか30mLの燃料を製造できる小規模な装置から延床面積1200平方メートルを誇る実証プラントへのスケールアップと安定的な連続運転を実現でき、大阪・関西万博では、この実証プラントで一貫製造した合成燃料軽油約13,000L、合成燃料ガソリン約3,000Lの提供を可能としました。
まとめ
2022年のNEDO事業開始から2年半でのプラント完成・連続運転開始、そして2025年大阪・関西万博での走行実証完遂は、多くの関係者の努力と情熱、長年蓄積されたENEOSの知見と技術、そして多くの方の理解・協力の結集により導かれたものです。ENEOSは、万博での取り組みにより獲得した知見を更なる技術開発に繋げ、これからも、カーボンニュートラル社会の実現に向けて挑戦しつづけていきます。
※ 水素と二酸化炭素から一貫製造した合成燃料を営業車両の運行に使用することは国内初



