横浜マラソンを支える未来のエネルギー。合成燃料の社会実装に挑むENEOS

 ENEOS株式会社(以下、ENEOS)は、2026年10月25日(日)に開催される「横浜マラソン 2026」に協賛しています。また、「横浜マラソン 2026」に関連するイベントで使用される発電機の燃料として、ENEOSの合成燃料を提供します。合成燃料は、水素と二酸化炭素(CO₂)を原料として作られる液体燃料で、製造時や使用時のCO₂排出量を抑え、温室効果ガスの排出削減に貢献できる次世代燃料です。本記事では、この合成燃料をはじめとするカーボンニュートラル燃料の中長期的な戦略や製造・供給体制の整備に携わる次世代燃料部の松野さんに、ENEOSと横浜市の関わりや今回の「横浜マラソン 2026」への合成燃料活用、そして社会への普及に向けた取り組み、ENEOSが描くカーボンニュートラル社会の実現について話を聞きました。

この記事の目次

ENEOSが横浜マラソンを支える理由

「横浜マラソン2025」スタート地点の様子
提供:横浜マラソン組織委員会

 ENEOSは、大会が開催される神奈川県横浜市に、今回取り上げる合成燃料の製造にあたっている中央技術研究所のほか、根岸製油所、横浜製造所、鶴見ルブパークといった複数の拠点を有しています。「スポーツを通じてWELL-BEING※を実現するとともに、ダイバーシティ&インクルージョンの視点による共生社会を実現する」という横浜市の姿勢に賛同し、「横浜マラソン」に協賛をしています。

 SDGsの視点を踏まえ、環境に配慮した取組みや、誰もが参加できる大会づくりなど、持続可能な大会開催に向けて準備が進められています。ENEOSも、大会に関わる全ての皆さまに大いに楽しんでいただけるよう、大会をサポートしています。

※WELL-BEING:個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念(出典:厚生労働省 雇用政策研究会 雇用政策研究会報告書)

マラソンとエネルギーの意外な接点

「横浜マラソン2025」エネゴリくんバルーンの様子

 大規模なスポーツイベントでは会場の設備も大がかりになり、さまざまなエネルギーが必要になります。「横浜マラソン 2026」では、フィニッシュエリアで使用する発電機の燃料として、ENEOSが国内で製造した合成燃料100%の軽油を提供する予定です。ENEOSとして合成燃料の発電機への使用は国内初となります。

 安全でスムーズな大会運営に欠かせない電気。その電力供給を「次世代燃料」で支えることが、社会への普及に向けた有効な選択肢になると考えています。

合成燃料が注目される理由

 合成燃料とは、従来の石油とは異なる原料から製造された燃料です。ENEOSが提供する合成燃料は、水素と二酸化炭素を原料として製造され、ガソリンや軽油、航空燃料、重油などの代替燃料として利用できます。合成燃料はその生産から使用までの「ライフサイクル」を通じた二酸化炭素排出量が、化石燃料と比較すると大幅に抑えられており、カーボンニュートラルに向けた大きな助けとなります。

 さらに注目したいのが、その使いやすさです。新たな燃料やエネルギーの導入には専用設備が必要となる場合があります。一方、合成燃料は従来の燃料と同様の性状を持つため、従来の燃料の代替として単独で使用できるほか、従来の燃料と混合して使用することもできます。そのため、タンクローリーやサービスステーション(ガソリンスタンド)などの既存の設備やインフラをそのまま活用でき、新たな設備投資を抑えられます。

 脱炭素に向けた動きが進むなか、合成燃料の普及はENEOSに課せられた大きなテーマです。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「グリーンイノベーション基金事業」を活用した製造技術開発に加え、供給体制の構築や市場づくりにも取り組んでいます。こうした取り組みの一環として、国内での技術開発と並行し、海外から合成燃料を調達するための体制づくりも進めています。2026年には、合成燃料(ガソリン)を製造するGerman eFuel One(GEF1)社との売買契約を締結しました。今後もこうした国内外のパートナーとの連携を通じ、合成燃料の社会実装と普及拡大を進めていきます。

<GEF1との協業について、詳しくはこちら>

なぜ横浜マラソンで取り組むのか

 「横浜マラソン 2026」では、ENEOSの合成燃料を使用した軽油が使用される予定です。横浜マラソンという大会を実証の場として選んだ背景や、その意義について、次世代燃料部の松野さんに話を聞きました。

――横浜とのゆかりも深いENEOSですが、その中でも「横浜マラソン」を選んだ理由はどのようなところにありますか。

松野航大さん(以下、松野) ENEOSの重要な拠点があることをはじめ、横浜市との関わりは深いものです。横浜マラソンは、横浜市をはじめ全国各地から3万人ものランナーが参加し、沿道観戦者数は38万人にも上る大きな注目を集めるイベントであり、そういった場でENEOSの合成燃料を使っていただくことで、消費者の皆さまに合成燃料を知っていただき、その良さを理解していただく機会になると考えています。

 横浜マラソンも元々、脱炭素など持続可能な取り組みへの意識がとても高い大会ですので、私たちの思いとマッチしたというところも大きいです。2025年の大阪・関西万博でもこの合成燃料を使用してシャトルバスや関係者車両の運行を行っていたこともあり、それを知っていた事務局の方からも、「ぜひ、横浜マラソンでも使いたい」とのお返事をいただきました。

<大阪・関西万博での取り組みについて、詳しくはこちら>

――合成燃料は、大会のどのようなところで使用されるのですか。

松野 大会当日のフィニッシュエリアでは、大会運営に必要な機器やイベントステージなどが設営される予定です。そこの照明やモニター、音響などの機材を動かすための発電機に、合成燃料を使った軽油を提供します。燃料というと車を動かすガソリンなどのイメージが強いかもしれませんが、発電にも使用されているんですよ。大阪・関西万博では合成燃料の割合を段階的に増やしてシャトルバスや車両の運行をしましたが、今回は100%合成燃料の軽油を使用予定です。

――合成燃料を使用した軽油の特徴を教えてください。

松野 合成燃料の最大の特徴は、再生可能エネルギー由来である水素と、工場や発電所などから回収した、あるいは大気中に存在する二酸化炭素が原料であり、クリーンな燃料であるという点です。化石燃料と比較してCO₂の排出量を70~80%削減でき、地球温暖化対策に貢献できる可能性を秘めています。原油を海外からの輸入に依存する従来の化石燃料とは異なり、合成燃料は将来的に多様な地域・資源を活用して生産できる可能性があります。供給源の選択肢を広げることで、エネルギー供給の安定性向上やレジリエンス強化への貢献も期待されています。

 また、使用する際のメリットとしては、合成燃料も従来の石油由来の燃料と同じ性状をもつため、既存の設備やインフラを活用しながら、現在使用されている石油由来の軽油やガソリンなどの代替として利用できる点が大きな特徴です。

――一般来場者へのPRには、どのような意義を感じていますか。

松野 合成燃料は、製造・供給体制を整備するだけで普及するものではありません。私たち次世代燃料部が課題として感じているのが、まだまだ認知度が高くないという点です。まずは皆さまに合成燃料があることを知っていただく必要があると感じています。横浜マラソンのような多くの人が集まる注目度の高いイベントで合成燃料を使用してもらえることは、その価値や可能性を広く知っていただくための大きな機会だと感じています。

ENEOSが描く未来 

 エネルギーの安定供給はENEOSが果たすべき大きな責任です、と松野さんは語ります。資源に乏しい日本では原油をとりまく世界情勢の影響を受けやすく、エネルギー価格の高騰が生活を圧迫することも少なくありません。合成燃料の生産と供給が安定することで、エネルギー供給の安定化も見込めます。

――合成燃料の国内商用化については、どのようなロードマップがありますか。

松野 合成燃料は、将来の脱炭素化に貢献できる有望な選択肢です。一方で、先行して普及しつつあるバイオマス燃料と比較するとまだ生産コストが高く、生産できる量も少ないため、製造コストの低減や国内外と提携した生産体制の拡充や供給網の確立などに取り組むとともに、合成燃料の認知向上とその価値をアピールし、「環境負荷を軽減できる」、「既存の燃料供給インフラをそのまま活用できる」といったメリットのある次世代燃料を、「使いたい」と思ってもらえるような市場の地盤づくりが2020年代の注力ポイントです。まずはENEOSのこうした思いや次世代燃料の価値に共感してくださる企業さまとの取り組みを通じて、より中長期的には、街の中にあるサービスステーションでも一般のお客さまが利用できるような環境になっていくのが理想です。

――横浜マラソンへの燃料提供は、そのステップというわけですね。

松野 はい。世界的に脱炭素化への取り組みが進むなか、合成燃料はCO₂排出量の削減に貢献できる燃料として期待されています。既存の設備やインフラを活用できることも大きな特長で、世界各国で研究開発や実用化に向けた取り組みが進んでいます。社会に浸透し、「自分たちもこれを使おう」と需要が立ち上がるタイミングでしっかりと安定供給できるような体制を整えておくことが、2030年代に向けた私たちのミッションであると考えています。

 ENEOSがこれまで石油製品の製造・供給を通じて培ってきたノウハウを次世代燃料にも活かし、存在感をもって次世代燃料の普及に努めていきます。その一歩となる「横浜マラソン 2026」への協賛と燃料の提供を通して、来場される皆さまにも、まずは「合成燃料という脱炭素の選択肢があるんだ」と知っていただけたらと思っています。