製油所の技術開発とDXの好事例を紹介!<2025年度ENEOSエネルギー技術会議レポート前編>

2026.4.6
製油所
ENEOS 製造部

2026年2月に開催された「2025年度ENEOSエネルギー技術会議」の様子や、当日発表されたENEOSの新技術、業務改善への取り組みなどの詳細を前後編に分けてレポートします。前編では会議の概要と、製油所の配管漏洩トラブル抑止策として注目される「外面腐食検査DX 1次検査の品質向上×効率化への取り組み」の発表について、ご紹介します。

この記事の目次

 ENEOS株式会社は2026224日、ENEOS本社(東京・大手町)で「2025年度ENEOSエネルギー技術会議」を開催しました。この会議では、製油所・製造所および関連部門によるENEOSの安全推進、安全操業、安定供給、そして競争力強化を目指す取り組みについて、社員が研究発表を行いました。研究発表のテーマは、既存設備の能力を最大限に引き出す技術開発や管理技術の検証・導入の推進、デジタルやAIの活用など多岐にわたります。これらを通じて、情報共有や会社全体の意識向上・啓発を図っており、社員の技術交流の一環として年に1度開催されています。

山口社長が挨拶「改善活動加速や水平展開、アイデア創出につなげたい」

 会議の冒頭には山口敦治社長が登壇。「私たちが長年にわたり製油所や研究所、あるいはIT部門で培ってきた技術は、ENEOS全てのエネルギー事業の基盤として生かされています。さらに技術力を高め、その技術力を継承していくことが持続的な成長と社会貢献につながると考えています。」とし、「成果だけでなく、直面した課題や工夫も積極的に共有していただきたい。それが改善活動の加速や次年度の水平展開、新たなアイデアの創出につながると確信しています。今日のあたり前を支え、明日のあたり前をリードするために、本会議が実りあるものとなるよう積極的な参加と熱意ある議論を期待しています。」と力強く開会を宣言しました。

2部構成で計8件の研究成果を発表

 続いて、第1部「新技術・将来像」と第2部「基盤事業の競争力強化(安全安定操業・効率化・省エネ)」の2部構成で、以下8件の取り組みの成果が発表されました。

① 外面腐食検査DX 1次検査の品質向上×効率化への取り組み

② タンク槽内デジタル監視システム

③ ~大分全Gr参加型 市民開発活動~OITA効率化コミュニティ(IT戦略部協業)

④ ニードルコークスを用いた環境資材の開発

⑤ 世界最高水準の五井火力発電所 建設プロジェクト

⑥ 固定床リフォーマーのランレングス延長への取り組み

⑦ 川崎製油所Refinery全停止時のSU装置早期立ち上げ対応

⑧ 仮設排水処理設備による高硫化水素排水の処理早期化

 各自工夫を凝らしたスライド資料を使った発表には、会場に集まった役員や社員らが熱心に耳を傾け、発表を終えた後の質疑応答でも活発な議論が交わされました。

 本記事では、その中から川崎製油所設備検査2グループの光山大貴さんと、技術計画部次世代技術グループの田中宏和さんの共同発表「①外面腐食検査DX 1次検査の品質向上×効率化への取り組み」を取り上げて、ご紹介します。

配管の外面腐食検査の課題をアプリで解決

 外面腐食とは、配管に施工されている保温材が劣化した部分から雨水が入り、そこから配管が錆びて穴が開いてしまう状態のことです。外面腐食は、配管漏洩のトラブルの中でも比較的高い割合を占めています。

 そこでENEOSでは外面腐食の“早期発見”を目指し、全配管の目視によるスクリーニング(1次検査)と、目視で発見したリスクの高い箇所の詳細チェック(2次検査)という2段階での検査を徹底すると同時に、各製油所の運転グループによる点検も実施しています。

 1次検査は検査の起点であり重要度が高いのですが、川崎製油所の光山さんによると、質・量の両面で課題があったと言います。

 質の面では、外観の変化だけでなく、周辺の環境なども見極めながら判断する必要があり、非常に難易度が高いことが挙げられます。結果的に、検査の専門家ではない運転員にとっては運用のハードルが高くなっていました。

 また、量の問題もあります。川崎製油所を例に取れば、製油所の敷地面積は東京ドーム61個分に相当し、ピックアップする配管の数も膨大なものになります。

 これらの課題に対し、川崎製油所では現場サイドから検査の品質向上を目指す運転員向け1次検査教育アプリ「ぴん!とゲームズ」を導入。本社では検査作業の効率化に向けた外面腐食管理アプリの導入を推進しています。

運転員向け外面腐食1次検査教育アプリ紹介

 川崎製油所では、運転員に対して、リフレッシュ教育(年に1度の対面での説明)、合同点検(若手社員と運転員を対象とした設備検査の実地研修)、過去のトラブルの事例集の配布という3つのアプローチで教育を行っていましたが、現場からは不十分という声が上がっていたそうです。難易度の高い検査なので、スキルを向上させる必要性もありました。

 そうした中で、近年増えているZ世代の社員も視野に入れ、楽しみながら学べるスマホゲームのようなクイズ形式の教育アプリに着目したのです。スマホ学習ゲーム作成アプリ「ぴん!とゲームズ」には6つの既存ゲームがあり、画像と選択肢を変えるだけでカスタマイズが可能です。これを活用することにより1カ月半でスピード導入でき、制作コストも抑えられました。

 事例集と現場の社員の意見なども組み込みながら、全体で250程度の問題を用意しています。1回のチャレンジは5問となっており、気軽に取り組める仕組みにしました。正答率と回答スピードをスコア化し、ゲームのようにアイテムが獲得できたり、ランキングによる表彰制度を導入することで、利用意欲を高める工夫をしています。

 ランキングの上位者からは、「これまでは塗装劣化などで変色した部分もピックアップしていたが、実際にはそれは問題ないということが分かった。ゲームのおかげで現場での見え方が変わった」という感想が寄せられています。今後は専門保全の目視検査員にも適用範囲を広げたり、新入社員に向けた暗黙知(コツや勘どころといった、経験に基づく言語化が難しい情報)の伝達など、他分野に展開したりすることを検討しているそうです。

外面腐食管理アプリの開発と展開

 外面腐食の1次検査は従来、印刷した図面を現場に持参して検査結果をそれに記入、事務所に戻ってExcelWordでレポートを作成するという煩雑な工程で行われていました。しかし、外面腐食管理アプリを活用すれば、現場でタブレットに直接入力してレポート作成まで一度に完了させることができます。入力された情報はクラウドで一元管理されるので、関係者同士でリアルタイムに情報を共有することも可能です。

 4月には前回のエネルギー技術会議で紹介されたデジタルツイン基盤(CDF)と連携します。また、アプリに蓄積されたデータは今後、AIに活かしていく予定です。

 外面腐食管理アプリをリリースしてからの約3年で、登録された検査点の数は20261月末時点で累計10万点以上に上りました。導入している各製油所の設備検査担当者や検査会社様からは、様々なフィードバックを受けており、それを反映する形で4半期に1度のアップデートを行っています。2025年度の下期には、20264月から全所に展開する保温下腐食の新しい検査プログラムを実装し、検査の効率化に寄与していきます。

まとめ

 この記事では、「2025年度ENEOSエネルギー技術会議」の様子や、行われた発表の中から「外面腐食検査DX 1次検査の品質向上×効率化への取り組み」について詳しくレポートしました。後編では、水島製油所の「タンク槽内デジタル監視システム」に関する発表を紹介しています。ぜひ、合わせて、ご覧ください。