製油所の技術開発とDXの好事例を紹介!<2025年度ENEOSエネルギー技術会議レポート後編>

2026.4.6
製油所
ENEOS 製造部

2026年2月に開催された「2025年度ENEOSエネルギー技術会議」の様子や、当日発表されたENEOSの新技術、業務改善への取り組みなどの詳細を前後編に分けてレポートします。後編では水島製油所で導入されている「タンク槽内デジタル監視システム」についての発表や、全発表終了後の講評を取り上げます。

この記事の目次

タンク槽内デジタル監視システム

 ENEOSは「デジタル活用」を重要施策と位置付け、AIによる自律的な業務の遂行を推進しています。中核施設である製油所では、安全・安定操業、さらなる効率化・高度化の実現に向け、様々なデジタル技術活用の事例が報告されています。

 前編の「外面腐食検査DX 1次検査の品質向上×効率化への取り組み」に続き、後編では水島製油所設備保全1グループの髙橋勇統さんによる「タンク槽内デジタル監視システム」の発表を中心にご紹介します。

 製油所では塔槽類等(タワーやタンクなど)の中で検査や補修などの作業を行っています。その際に、安全管理のために塔槽類等の外側から「監視人」が常時、作業を見守っています。水島製油所ではタンク槽内作業に任意の監視人を配置してきましたが、近年、複数の課題が顕在化していました。第一に、人手不足で十分な監視人の確保が困難なことです。また、猛暑が続けば、熱中症や労働災害のリスクも高まります。さらに、大きなタンクの場合、奥の方が暗くて見通しが悪く、作業状況の把握が難しいという問題もありました。

 これらの課題とは別に、水島製油所ではタンクに入る入槽管理を、現場に設置された管理板に名札を貼るアナログ方式で行っており、現場まで行かないと入槽者が把握できないという悩みもありました。

 協力会社と対応を模索する中で、これらの課題を一気に解決する対策として誕生したのがカメラによる監視を活用した「タンク槽内デジタル監視システム」です。

 タンク槽内デジタル監視システムでは、監視作業に遠隔カメラを用い、監視室で一括して監視業務を行います。これにより、監視人1人で複数のタンク槽内作業の監視が可能になりました。また、監視人は屋内で作業を行うので、熱中症などのリスクも低減されます。さらに、カメラのズーム機能や暗視機能により、タンクの奥の方が見えづらいという課題も解消されました。

 入槽管理についてもICカードによるオンライン管理に変更し、現場でなくても入槽者の把握が可能になり、入槽者ログによって稼働人員も確認できるようになりました。

 さらに、緊急時にはパトランプ(回転灯)を作動してアラームを鳴らす仕組みとし、緊急システムが稼働した際の対応のルールも整備して、ENEOSと協力会社で共有しています。

 2022年頃からシステムのテスト運用をスタートし、現場で使いながら問題点を洗い出して改善を図ったうえで、20257月から本格運用しています。

 監視作業を一本化したことにより、工数やコストは大きく削減されました。作業員が作業に集中できることで作業効率が向上し、人手不足問題の解消、熱中症や労災リスクの低下、さらに監視経験の浅い方や年輩の方でも作業が可能になるなど、製油所全体での差別化や競争力の強化につながっています。

 現在は、熱中症対策やタンク槽内の異常の早期把握のための新機能の追加を目指し、協力会社と調整を進めています。また、今後は製油所の定期修理工事などタンク槽内作業以外の監視業務にも転用できないか、新しい展開先を模索していく予定です。

※清掃後のタンク等危険物の除去が完了している空間の監視については、ENEOS独自のルールを定めており、タンク槽内デジタル監視システムを使用しての監視作業が可能かどうかは、各自治体の判断により異なる可能性があります。関係法令に基づき、所轄行政機関とも認識を共有しながら、当社として安全性を十分に考慮したうえで、カメラによる監視が認められるケースとして運用しています。

寺本常務が講評「リアルに結果を出したのは素晴らしい」

 全ての発表が終わった後、寺本光司常務が登壇して講評を行いました。寺本常務は「第1部は取り組み自体が楽しいといったポジティブな姿勢を感じる内容。第2部は絶対諦めないことを出発点に困難な課題に挑み、現実的な対策を探りながら何らかのソリューションにたどり着いたという内容でした。全体を通して、皆さんがそれぞれの観点からリアルに結果を出したことは本当に素晴らしかったです」と評価した上で、「今日は皆さんの業務に対する情熱を強く感じたので、それを日頃からもっと前面に出すと、職場がさらに明るく活性化すると思います。ぜひとも本会議からの学びとしてほしいです」と会議を締めくくりました。

まとめ

 ENEOS株式会社には、長い歴史を通じて、現場で発生した課題や業務改革に向け社員が自発的に取り組みを行う企業文化が醸成されています。毎年開催される「ENEOSエネルギー技術会議」は、製油所・製造所および関連部門を中心に、そうした取り組みの成果を全社に共有する大切な機会です。困難に負けず取り組みを形にした体験は、他部門の社員にも勇気やモチベーションを与え、さらに、共有された知見は水平展開され、業務の質の向上や新しいアイデアの創出という正の循環を生み出しています。