劇的な変化を起こし続ける“製油所DX”<AI活用 後編>

2026.4.8
製油所
ENEOS 技術計画部

ENEOSグループは長期ビジョンとして、「エネルギー・素材の安定供給」と「カーボンニュートラル社会の実現」の両立に向けた挑戦を掲げています。DX化はその実現に向けた重要な施策であり、製油所でもデジタル技術の導入を進めています。前編 では、自動運転やデータによる異常検知、デジタルツインといった、サイバー領域のデータをAI等の高度な技術によって活用する事例について紹介しました。今回は、現場で業務を行う運転員をテクノロジーの力でサポートするフィジカル領域について、ENEOS技術計画部のお二人から詳しくお話を伺いました。

この記事の目次

配管の状態を一括管理!「配管点検支援アプリ」

今回お話を伺った甲田さん(左)と谷さん(右)

―前回のお話で、人手不足による設備メンテナンスの負担が課題にあるとおっしゃっていました。この「配管点検支援アプリ」は、その課題を解決するツールの一つでしょうか?

 その通りです。これは、スマートフォンやタブレットで配管の腐食や損傷の検査結果を記録・管理するアプリです。製油所内には数えきれないほどの配管が複雑に入り組んでおり、膨大な数の配管情報を記録し、正確に管理することは大きな負担になっていました。しかし、このアプリを活用することで、運転員の記録と管理の手間が大幅に削減されました。

―アプリを導入するまでは、どのようにチェックしていたのですか?

 これまでは、紙の図面を手に現場へ向かい、検査結果をメモなどに書き込んだ後、再度事務所に戻ってパソコンに入力していました。しかし、製油所には何万本もの配管が何百箇所にも設置してあります。そのため、全ての配管を検査するには、移動や記録にかなりの手間がかかっていました。配管点検支援アプリを導入したことによって、現場で記録できるようになっただけでなく、撮影した写真をもとに過去の状況と見比べることで、腐食検査の質を向上させることにつながっています。

―点検作業の効率化だけでなく、品質も高まったのですね!

 そうですね。将来的には、撮影した膨大な写真をAIが自動解析することで、異常の箇所を教えてくれる仕組みを目指しています。

高所はお任せ!「ドローンの自動巡回点検」

―「ドローンの自動巡回点検」について詳しく教えてください。

 これは、点検作業が危険な箇所をドローンが自動撮影する仕組みです。以前は、高さ200mもある煙突や巨大タンクの点検を人力で行っていました。はしごの先にゴンドラのような足場がついた装置に乗って上まで上がるのですが、かなり高さがあり作業時間もかかるため改善が必要でした。

―高さ200m!高所での大変な点検作業だったんですね。

 ドローンには、細かな部分まで鮮明に撮影できるカメラを搭載しています。そのため、安全性と効率化に加え、より精度の高い点検が可能になりました。各製油所ではドローンを複数機保有しており、ドローンの操縦資格を取得する所員も増えてきています。製油所員がドローンによる点検を定期的に実施することで、製油所のより安心・安全な操業につなげていきます。

詳しくはこちらのニュースリリースから

環境を守る強い味方!「AI画像解析による異常の早期探知」

―「AI画像解析による異常の早期探知」について詳しく教えてください。

 これは、AIがカメラ映像を解析し、水上の油膜をいち早く検知するシステムです。製油所の多くは海岸沿いに立地しており、船を使った原油の調達や石油製品の供給がしやすいというメリットがありますが、油が海へ流入してしまう万が一の懸念もあります。油漏れによる環境汚染を防ぐためには細心の注意が必要であり、AI画像解析は油漏れを早期に察知することが可能な優れたシステムです。

―環境対策にもAIが役立っているんですね!

 そうなんです。油の海上流出を防ぐことは、環境対策だけでなく、地域の方の安心・安全な生活を守るためにも徹底しなければなりません。そのため、製油所では厳しい試験項目をクリアした綺麗な水だけを海に放出しています。また、万が一の油漏れに備えて、これまでは運転員が海に放出される手前の段階で油が浮いていないか目視していました。この確認作業を支援し、より安全性を高めるために、AIの画像解析で油が出てきた瞬間に通知が届くようにする技術の実証を進めています。

―徹底した油の流出対策は地域の方の安心と信頼につながりますね!

これからの製油所のDXはどうなっていく?

―今後の製油所でのDX化について、展望はありますか?

 私たちは、AIを導入することがゴールではなく、使ってもらい、定着させるまでを見据えています。DXに取り組み始めた当初は、技術の検証や現場での活用方法などチャレンジングな模索が多くありました。しかし、これからは導入したデジタル技術をどのように定着させていくかといった、より現実的な部分に向き合う必要があると思います。

―製油所で働く人の中にはデジタル技術に精通していない方もいると思います。そういった方にも活用していただくための工夫は何かされていますか?

 2分程度で読める「メルマガ」や「動画」を用いて、使い方を分かりやすく紹介しています。ちなみに、メルマガではAIに作ってもらったキャラクターを登場させて、読みやすくする工夫もしています。

―具体的にはどのような内容ですか?

 例えば、実際に導入しているデジタル技術の使用方法などをわかりやすく動画で説明するほか、新入社員の男女がDXについて会話形式で説明する回などもあります。こうしたDXの情報発信に関するアンケートを取っているのですが、「動画やメルマガを見てDXに興味が湧いた」などの回答が少しずつ増えており、浸透率が高くなっていることを実感しています。

―実際に使う現場の方が前向きに取り組める工夫がされているのですね!

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  技術計画部次世代技術グループ 甲田梨沙
2010年、東燃ゼネラル石油株式会社(現ENEOS株式会社)に入社。川崎製油所にアプリケーションエンジニアとして配属され、8年間にわたり制御システムの開発・メンテナンスに従事。現場の最前線でシステムを支えた後、2017年に工務部へ。DXの立ち上げから参画し、現在は技術計画部次世代技術グループのマネージャーとして製油所DXの全体戦略や企画の取りまとめを担当。ITAI関連の部署と連携し、ENEOS全体のデジタル変革を推進する。

  技術計画部次世代技術グループ 谷省吾
2015年、JX日鉱日石エネルギー株式会社(現ENEOS株式会社)水島製油所に運転員として入社。3年間、現場・ボード業務を経験した後、運転管理業務に5年間従事。運転管理のかたわら現場へのDX推進や受け入れを行う。2023年より本社の技術計画部次世代技術グループへ。現場での経験を強みに、タブレット端末やAI自動運転の導入など現場目線でのシステム改善や調整をリードする。

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まとめ

 製油所DXは、働く人の業務や安全面のサポートだけでなく、環境対策にも役立っています。ENEOSの製油所では、これまで現場のニーズに対応する高度な技術開発や導入に力を入れてきました。今後、これらの技術を定着させていくことで、高い安全性と生産性の実現を目指します。みなさまに安心・安定の石油製品をお届けできるよう、これからも製油所は進化し続けてまいります。