現場がつくる未来~大分製油所の「市民開発」ツールによる業務効率化~ 後編 収穫は「DXで自ら業務の進め方を工夫し、改善できる」という自信

2026.7.23
各所の活動
ENEOS 大分製油所・デジタル推進部

ENEOSグループは社会の「今日のあたり前」を支えるエネルギー業界のリーディングカンパニーとして、デジタルツールの安定的な運用を目指しています。そのような中、「守り」だけでなく、DXに代表される「攻め」のデジタル活用にも積極的に取り組みを進めています。それは、ITやAIによる業務の自動化・省力化や、現場担当者が自らアプリを開発する「市民開発」などを通じたDXの促進です。2025年度には大分製油所がデジタル推進部の協力を得て「OITA効率化コミュニティ」を設置、2026年1月末までに51件の業務効率化ツールの開発に成功しました。同コミュニティのリーダーを務める環境安全グループの小野拓也さんと、伴走支援を行ったデジタル推進部の南帆乃香さんによる対談記事の後編では、2人が取り組みの評価、今後の展開などを語り合いました。

小野:実際に走り出してみると本当に大変でしたが、南さんのサポートもあり、メンバーからは「忙しい中でも取り組む価値のあるプロジェクトだ」といった前向きな意見をたくさんもらうことができました。
開発したツールの中には、他部門の私から見てもすごいなと思うものがたくさんあります。
例えば、製油所では、冷却水熱交換器(クーラー)の運転傾向を継続的に監視する必要があります。従来は、外注先からクーラーの運転実測値(Excelデータ)をメールで提出いただき、担当者が個別に内容を確認する運用としていました。今回、この業務の効率化とさらなるデータ活用を目的に、「市民開発」による改善を実施しました。実際には、外注先と共同で利用するSharePoint(電子ファイル共有サービス)を整備し、最新のExcelファイルを所定の場所に格納する運用へ変更しました。これにより、誰もがいつでも最新の測定結果を参照できるようになりました。さらに、ExcelファイルとPower BIを連携し、「傾向管理ダッシュボード」を構築しました。Power BIは、Excelなどに蓄積されたデータをグラフや表に整理し、状況をひと目で把握できる画面を作成するツールです。これにより、運転傾向を明確に可視化し、データに基づいた活動や意思決定が可能となりました。
このダッシュボードは製油技術グループや設備検査グループのお悩み解決につながりましたが、他にも品質管理グループの「試薬在庫管理アプリ」や、総務グループの「経費申請アプリ」など、メンバーが日常業務の中で感じた課題や「面倒さ」を起点に、それを解決するツールを自ら開発している点が非常に興味深かったです。

南:私自身、プロジェクトは大成功だと考えていますし、デジタル推進部としても大分製油所での取り組みを高く評価しています。
目に見える成果もたくさんありますが、それ以上に大きな成果は、「非効率だ」「面倒だ」と感じていた業務に対し、自分が動くことで何とかできないかという気持ちを一歩進め、行動につなげることができた点だと思います。
メンバーの皆さんには、今回の活動を通じて、Power Platformは特別なものではなく、普段使っているExcelやPowerPointと同じように便利なツールの1つだと受け止めてもらえたと思います。これを機に、改善のアイデアが生まれた時に「じゃあ、ちょっと作ってみようか」という風土が育っていけば嬉しいですね。

図1 市民開発実績
図2 コミュニティ活動満足度アンケート

小野:今回の取り組みを通じて、Power Automateによる定型業務の自動化、Power Appsによる業務に合わせたアプリ開発、Power BIによるデータを分かりやすくダッシュボード化するといった一連の技術を学びました。
そうした学びを通じて、業務上で困ったことがあっても、本社のシステム開発部門に頼らず、自分たちで解決できる方法があることを実感しました。さらに、「市民開発」ツールという“共通言語”を得たことで、「この業務だったらこうすれば効率化できる」と、自分たちで業務の進め方を工夫できるようになり、改善を前向きに楽しめる土壌が生まれています。

南:それはすごいことですよね。大分製油所が1年間でここまでの成果を出せた背景には、機能する体制を構築できたことが大きいと感じています。具体的には、この取り組みを事業計画に明記するなど幹部層による環境面でのサポート、小野さんを中心とした事務局の推進力、そして、各グループから改善への熱い思いを持ったキーマンが揃ったこと。この3つのうち、どれか1つでも欠けていたら、今回のような成果にはつながらなかったのではないでしょうか。
デジタル推進部として、今後の「市民開発」の取り組みをさらに推進していくにあたり、他の部署に対しても“大分モデル”のような体制づくりが重要であるという点を発信していきたいと考えています。

小野:デジタル推進部の支援が一段落した今、2026年度からは「自立・自走」が大きなテーマになると考えています。そもそもOITA効率化コミュニティという名前を付けたのは、教育や開発の支援をコミュニティ内で完結できる状態を目指すという意図があります。南さんが不在でも、あるいはリーダーの私が異動した場合でも、コミュニティが継続して自走していける体制を確立することが求められています。

また、2025年度の後半から加わった新メンバーに対しては、その意欲の火を絶やさないよう継続的に支えていく必要があります。
さらに、私たちが開発した業務効率化ツールや今回の取り組みで得たノウハウは、共感し活用してくれる社員が増えるほど、効果が掛け算的に増えていくものと考えています。これまでに作成した勉強会の資料やツールはすぐに横展開できるように整備しており、他拠点で同様の取り組みを進める際にも活用できるように準備しています。
今後も積極的に情報共有を行い、同様の課題を抱える仲間を支援しながら、会社全体のDX推進機運の加速に向けて、微力ながら貢献していければ嬉しいです。

大分製油所 環境安全グループ 小野 拓也
前職を経て、2020年9月にENEOSへ入社。大分製油所 製油技術グループにて石油精製プロセス改善、DX推進担当を務めた。2025年4月より環境安全グループ 保安管理チームリーダーを務める。現在は、製油所の保安・防災活動の推進、操業に関わる法規管理、関係行政との連携、保安防災管理など、製油所の安全を守る幅広い業務を担っている。OITA効率化コミュニティでは、現場の業務改善・効率化の推進・市民開発人材の育成に取り組んだ。

デジタル推進部 デジタル推進3グループ 南 帆乃香
2021年4月にENEOSへ入社。IT戦略部(現・デジタル推進部)にて、社内のDX案件の企画・推進や、基幹業務システムの刷新プロジェクトなどに従事。現在はデジタル推進3グループに所属し、製油所の運営を支える業務システムの企画・導入・刷新を、各プロジェクトの推進・管理を通じて担っている。OITA効率化コミュニティではデジタルの観点から現場の改善テーマを具体化し、施策の推進を主導するとともに改善活動の浸透・定着に取り組んだ。