グリーンケミカル:プラスチック原料のサスティナブル化への挑戦 ~バイオケミカルとケミカルリサイクルとは?~

ENEOSグループは、エネルギー・素材業界の日本におけるリーディングカンパニーとして、再生可能エネルギー、バイオマス、CCS(CO₂回収・貯蔵技術)などを活用し、2050年のカーボンニュートラル社会の実現を目指しています。今回は、プラスチック原料の非化石化(グリーンケミカル)を推進する基礎化学品企画部の林誠さん、基礎化学品販売部の佐藤宏太さんにお話を伺いました。植物や使用済み油などを化学品原料に活用する「バイオケミカル」、廃プラスチックを油化して原料化する「リサイクルケミカル」、この2つのソリューションについて深堀します。

この記事の目次

「グリーンケミカル」とはどのような取組ですか?

従来、プラスチック製品は、原油を精製して得られた成分を原料に生産されてきました。グリーンケミカルとは、これまで原油から作られていたプラスチック製品を原油ではない非化石原料をもちいて作ることを指し、ENEOSでは具体的に以下2つのソリューションについて取り組んでいます。

➀植物や使用済み食用油などのバイオマス原料を用いた「バイオケミカル」

②廃プラスチックを油化して資源に戻す:「ケミカルリサイクル」

プラスチック製品を使用する企業のグリーンケミカルのニーズを教えてください。

プラスチックは非常に便利な反面、製造・使用・廃棄の過程で多くの二酸化炭素を排出することが課題となっています。昨今、カーボンニュートラル等の流れもあり、多くの企業は環境対応に関わる目標を掲げています。とりわけ、プラスチック製品を製造・使用する企業は自社のプラスチック製品のライフサイクルにおいて排出するCO2の削減や資源循環に向けた取り組みを推進しています。当社のグリーンケミカルは、こうした分野に貢献できると考えています。実際に多くの企業から、バイオ由来原料やリサイクル由来原料から製造されるプラスチックを使用したいというお声をたくさんいただいております。

バイオケミカルとリサイクルケミカルについて詳しく教えてください。

バイオケミカルでは、まず植物や使用済み食用油等のバイオマス原料を水素化処理することで原油のような油(バイオ由来ケミカル原料)を製造します。次にこれを製油所で石油精製と同じプロセスで処理し、プラスチック原料を作り出す取組みです。

ENEOSでは2023年に、使用済み食用油などから作られたバイオ由来ケミカル原料を岡山県の水島製油所に投入し、バイオ由来ペットボトル原料(バイオパラキシレン)を製造しました。バイオパラキシレンの商業規模での製造は世界初となります。このバイオパラキシレンを使ったペットボトルはサントリーの飲料にご使用いただいています。

将来的には、使用済み食用油等からバイオパラキシレンまで一貫して製造できる体制構築を検討しています。

水島製油所パラキシレン製造装置

そして、ケミカルリサイクルは、廃棄された包装、容器など様々な種類のプラスチックを分子レベルまで分解し、原油のような油(リサイクル由来ケミカル原料)に変えて、石油精製のプロセスでプラスチック原料を製造する取り組みです。

ENEOSでは三菱ケミカルと共同で廃プラスチックの油化工場を茨城県鹿島地区に建設中で、2025年度の運転開始を目指しています。この工場が完成すると年間約2万トンの廃プラスチックを油に戻すことが可能となります。

更に、タイヤについても資源を循環させるべく、ブリヂストンと共同で使用済タイヤをケミカルリサイクルにより再びタイヤに戻すという研究開発を行っています。

ところで、プレスリリースに記載のあったマスバランスとは何でしょうか。

マスバランス方式とは

原料から製品への加工・流通において、バイオ由来原料やリサイクル由来原料などの非化石原料を従来の石油由来原料と混合する場合に、CO2排出低減などの非化石原料の価値を、非化石原料投入割合に応じて製品の一部に対して割り当てる手法。

バイオケミカルやケミカルリサイクルのプラスチック原料を製造するための専用装置を建設することは多額の投資が必要となります。そのため、当社では、既存装置を活用でき、従来製品と同一品質で提供可能なるマスバランス方式をお客様に提案しています。

さらに、マスバランス製品に適用される国際的な認証スキームとして「ISCC Plus」があります。この認証は、サプライチェーンにおいて、マスバランスの管理が適切になされていることを第3者機関が保証するものです。ENEOSはこの「ISCC Plus」の認証を取得することでマスバランス方式を活用したグリーンケミカルの信頼性・トレーサビリティを確保しています。

ENEOSのグリーンケミカルの今後について、展望をお聞かせください。

当社はカーボンニュートラル基本計画の中で、素材の分野については石油等の従来型資源に依存せず資源が循環するサーキュラーエコノミーの推進を目標に掲げています。これまでは石油から素材を作り、消費・廃棄という一方向でしたが、これからは廃プラスチックを再びプラスチックにすることや、バイオマス原料を活用することにより地下から新たに資源を掘り起こさなくとも資源が循環する社会の実現を目指しています。

具体的には2030年までに当社が供給する石油化学製品の20%を非化石原料化することを掲げています。この目標達成に向けて、様々なパートナーと連携し、国内外でグリーンケミカルの利用拡大をリードしていきたいと思います。