~エネゴリくんと石油精製をめぐる素朴な疑問~ ある日、エネゴリくんは石油精製について書かれた記事を読んでいましたが、そこには、こんな一文がありました。「加熱した原油は、常圧蒸留装置(通称トッパー)で、ガソリンや灯油、軽油などに分けられます。」エネゴリくんの手が止まります。「原油は熱するといろいろなものに分かれる。」と書かれていますが、一つの液体が、どうしていくつもの製品になるのでしょう。そう思うと、確かに不思議です。実は、この疑問(ぎもん)には「石油精製の本質」が隠されています。
この記事の目次
本当にガソリンを「作っている」の?

普段、私たちは「原油から“ガソリンを作る”」という言い方をよく耳にします。しかし、実際の石油精製は少し違います。原油の中には、ガソリン、灯油、軽油、重油、LPG(LPガス)や石油化学製品の原料になるさまざまな成分が、もともと混ざっています。製油所ではまず、それらを性質の違いを利用して分け、それぞれの製品として取り出します。つまり石油精製とは、一つの原油から一つの製品だけを作る工程ではなく、多様な成分を分離し、必要に応じて加工しながら、さまざまな製品を同時に生み出す工程なのです。この仕組みを理解するために、身近な例として「肉牛」を考えてみましょう。牛一頭には、ヒレ、ロース、ハラミ、カルビ(バラ)など、さまざまな部位があります。私たちは牛からヒレを「作る」のではなく、牛を解体して、それぞれの部位に「分けて」います。そして、「ヒレだけもっと欲しい」と思っても、ヒレだけを増やすことはできません。ヒレを取り出せば、ロースもカルビも必ずついてきます。実は、原油もこれとよく似ています。原油からガソリンだけを生産することはできません。ガソリンと、灯油や軽油、重油などは同時に生産されるのです。そして、各成分の混ざっている量は、原油の埋まっている地域によっても変わってきます。
だからガソリン“だけ”を増やせない

ここを誤解したままだと「もし、ガソリンが足りなくなったら、ガソリンだけたくさん作ればいいのでは?」という疑問が生まれます。しかし、先ほど説明したように、石油精製では一つの製品だけを自由に増やすことはできません。ガソリンを生産すれば、灯油や軽油、重油なども同時に生産されます。こうした製品は「連産品」と呼ばれています。つまり、欲しいものだけを自由に生産することはできないのです。これが石油精製の大きな特徴です。では、同時に生まれる製品は「余りもの」なのでしょうか。答えは「いいえ」です。「余りもの」は一つもありません。例えば、ガソリンは自動車の燃料、軽油はトラックなどの燃料、灯油は暖房用燃料など、重油は船舶や発電用燃料として利用されています。LPGは家庭や飲食店のガスコンロなどで使われ、石油化学製品の原料はプラスチックや化学繊維など、私たちの生活に欠かせない様々な製品になります。牛肉も同じです。ヒレだけが価値ある部位ではありません。ロースやハラミなどの肉はもちろん、内臓や革にも、それぞれ必要とされる用途があります。どの部位も無駄ではなくそれぞれに価値があるように、石油製品もまたどれか一つが主役ではなく、それぞれが異なる役割を担いながら社会を支えているのです。
ENEOSが行っているのは『調整の技術』

ここで終わりではありません。石油精製でもっとも難しいのは、社会が必要とする量に合わせて、製品全体のバランスを調整することです。確かに、一つの製品だけを自由に増やすことはできません。しかし、ENEOSの製油所では装置の運転条件や原油に合わせた工夫をすることで、ある程度調整することができます。季節が変われば需要も変わります。冬になれば灯油の需要が増え、物流が活発になれば軽油の需要が増えます。製油所ではこうした需要の変化を見据えながら24時間体制でどのように原油を処理するかを調整しています。一つの製品だけを増やせないからこそ、社会全体で必要とされる製品が不足しないように、どのような原油を使い、どう分け、どう使い切るかという全体を最適化する『調整の技術』が求められるのです。ENEOSではこうした工夫が毎日続けられ、私たちの生活を静かに、でも確実に支えています。
まとめ
エネゴリくんが感じた違和感は、多くの人が抱く疑問でもありました。石油精製とは、単に「ガソリンを作る」ことではありません。原油に含まれるさまざまな成分を活かしながら、ガソリン、灯油、軽油、LPG、石油化学製品の原料など、社会に欠かせない製品を生み出す仕事です。そして、一つの製品だけを自由に増やせないからこそ、ENEOSでは需要と供給のバランスを見ながら、24時間体制で調整が行われています。私たちの暮らしを支えているのは、目に見えるガソリンだけではありません。その背景には、「すべてを無駄なく活かす」という石油精製の知恵と技術があるのです。エネゴリくんも、今度は納得して読み進められそうですね。

「ハイオク」って何?【エネゴリくんの雑学】
ガソリンにはレギュラーとハイオクがあります。この“ハイオク”ですが、実は略語で正確には「ハイオクタン価ガソリン(High Octane Gasoline)」です。「ハイ」は“高い”、オクタン価とは、ガソリンがノッキング(エンジン内で燃料が異常燃焼して起こる衝撃現象)を起こしにくい度合いを示す数値のこと。そのオクタン価が高いガソリンを略して「ハイオク」と言っています。
スポーツカーや高性能エンジンは、エンジン内で燃料を強く圧縮して大きなパワーを生み出しますが、圧縮を強くするとノッキングが発生しやすくなるため、よりノッキングに強いハイオクガソリンが必要になります。
まとめると、ハイオクとは「オクタン価が高く、ノッキングを起こしにくいガソリン」という意味です。オクタン価も、ENEOSの製油所の中で調整していますよ。



