生物多様性

基本的な考え方

ENEOSグループは、操業・生産拠点の周辺環境に影響を与えかねない事業特性を持つことから、生物多様性の保全を重要なテーマと考えており、これをENEOSグループ行動基準に定めています。
操業・生産拠点の新設等にあたっては、あらかじめ環境影響調査を行い、植生や鳥類・動物・海洋生物等の生態系を確認するなど、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取り組みを推進しています。
また、⽣産拠点の多いENEOSでは、「エネルギーグループ⽣物多様性ガイドライン」を定めています。

エネルギーグループ生物多様性ガイドライン

【基本姿勢】

当社グループの事業活動が地球の生物多様性と大きく関わっていることを認識し、事業活動のあらゆる分野で生物多様性に配慮した取り組みを推進する。

【活動方針】

  1. 1.事業活動による生物多様性への影響の把握・分析、および事業活動の改善に努める。
  2. 2.自然保護、環境教育等、生物多様性保全に寄与する社会貢献活動を推進する。
  3. 3.生物多様性に関する当社グループの取り組みを広く社会に発信し、情報の共有に努める。
  • *ENEOSおよびそのグループ会社。

体制

体制については、環境マネジメントをご参照ください。

重点課題と計画・実績

2022年度の目標と結果・進捗

評価:達成・順調未達

ESG重点課題 取り組み項目 目標(KPI) 結果・進捗
生物多様性リスクの把握・管理 生物多様性リスクの特定と対応方針の検討 製造拠点におけるリスクの把握
(対象拠点の追加)

  • 製造拠点(20拠点)等と近接する保護区の有無を調査し、高リスク拠点がないことを確認
  • 海外拠点(7拠点)を対象へ追加して調査し、操業に影響を及ぼす保護区がないことを確認

生物多様性リスクの把握

当社グループは、ESG重点課題に生物多様性リスクを位置付けており、「製造拠点におけるリスクの把握」を取り組み目標としています。取り組み結果を年1回以上の頻度で経営会議・取締役会に報告しています。
製造拠点におけるリスクの把握には、一般公開されているリスク把握ツール(IBAT*1)を用いています。2022年度は海外7拠点を対象拠点に追加し、前年度の20拠点と合わせて計27拠点*2のリスクを調査しました。その結果、各製造拠点から半径5km以内に厳正保護地域、原生自然地域、国立公園および天然記念物(Ⅰa,b、Ⅱ、Ⅲ:下表参照)に該当する保護区がないことを確認しています。
今後の方針として、リスク把握の結果を3年ごとに見直すとともに、対象拠点の拡大等に伴い新たに保護区等が確認された場合には、外部機関から詳細情報を入手したうえで操業影響を評価します。

  1. *1Integrated Biodiversity Assessment Tool:生物多様性統合アセスメントツール。
  2. *2ENEOS 17(国内11、海外6)拠点、JX石油開発 3(国内1、海外2)拠点、JX金属 7(国内6拠点、海外1拠点)。

IUCN(国際自然保護連合)保護地域(カテゴリー)

カテゴリーⅠa
カテゴリーⅠb
厳正保護地域
原生自然地域
学術研究若しくは原生自然の保護を主目的として管理される保護地域
カテゴリーⅡ 国立公園 生態系の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
カテゴリーⅢ 天然記念物 特別な自然現象の保護を主目的として管理される地域
カテゴリーⅣ 種と生息地管理地域 管理を加えることによる保全を主目的として管理される地域
カテゴリーⅤ 景観保護地域 景観の保護とレクリエーションを主目的として管理される地域
カテゴリーⅥ 資源保護地域 自然の生態系の持続可能利用を主目的として管理される地域

主な取り組み

イニシアティブへの参画

経団連生物多様性宣言への賛同

ENEOSホールディングスは、「自然共生社会の構築を通じた持続可能な社会の実現」を目指す、経団連生物多様性宣言に賛同しています。

企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)への参画

ENEOSは、生物多様性の保全を目指して積極的に行動する企業の集まりである「企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)」に、2013年から参加しています。

Call to Actionへの賛同

当社は、2020年12月に、Business for Nature* が提言する「Call to Action」に賛同しました。
Call to Actionは、健全な社会、回復力のある経済、繁栄するビジネスは自然に依存しているという考えのもと、多くの企業の賛同をもって、各国政府に対して、2030年までの10年間に自然の損失を逆転させるための野心的な政策を取るよう求める提言です。

  • *世界経済フォーラム、持続可能な開発のための世界経済人会議、国際商業会議所等が中心となり、自然保護と回復に向けた行動を企業に求めていくことや、自然保護と回復に向けた企業の意思をもって政策決定者に影響を与えることを目的として設立された国際的な連合体。

生物多様性のための30by30アライアンスへの参加

当社は、2022年4月に「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しました。
30by30アライアンスは「ポスト2020生物多様性枠組案」の目標案の1つである2030年までに陸と海の30%以上の保全を目指す「30by30目標」の国内達成に向け、環境省を含めた産民官17団体を発起人として2022年4月に発足した有志連合です。
2023年10月、当社グループ製造拠点の1つである根岸製油所の中央緑地が、「30by30目標」達成に向けての環境省認定制度である「自然共生サイト*」として認定されました。

  • *30by30目標を達成するためには国立公園等の保護地域だけでは不足することから、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する区域のことで、2023年度から始まった新たな制度です。

国内での主な取り組み

当社グループは製造拠点において、地域の生物多様性保全活動に参加するほか、周辺の広大な緑地を豊かな生態系ネットワークの1つとして保全する活動に取り組んでいます。その他の事業所においても、周辺環境に合わせた環境保全活動を実施しています。
また、従業員に対する定期的な環境教育や環境保全に関する社会貢献活動を行っています。

生物多様性に関連する認証・認定等の状況

内容 対象 取得時期
いきもの共生事業所®認証(ABINC認証 ENEOS 根岸製油所 中央緑地 2020年2月

緑地管理:ENEOS根岸製油所における取り組み

ふれあいイベントの様子

ENEOS根岸製油所は、面積220万m2、周囲約12kmに及ぶ敷地を有する国内最大級の製油所です。周辺には三溪園や根岸森林公園など、広大な緑地に生息する多様ないきものの生態系ネットワークがあります。そのネットワークの1拠点として、所内中央部にある緑地帯(グリーンベルト、約6万m2)を利用して生物多様性保全活動に取り組んでいます。
2013年度から実施している生態系調査で、150種以上のいきものの生息を確認しています。
2018年度に、山羊による緑地内の除草やふれあいイベントの開催を開始し、それらの取り組みを拡充しながら緑地の活用を進めています。また、2019年度以降は緑地の維持管理を強化しています。
同製油所は、2020年2月に「いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)」を取得しました。2022年度には、環境省の認定実証事業に参加し、自然共生サイト認定相当の評価を受け、2023年10月に「自然共生サイト」として正式に認定されています。

ABINC(エイビンク)認証
  • *ABINC認証とは、一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)が開発した、いきもの共生事業所®推進ガイドラインの考え方に沿って計画・管理され、かつ土地利用通信簿で基準点以上を満たし、当審査過程において認証された事業所のこと。

藻場創出:ENEOS堺製油所における取り組み

ENEOS堺製油所は、大阪湾奥部の堺泉北臨海工業地帯に位置しています。大阪湾は閉鎖性海域で、湾奥部は陸域から流入する窒素・燐等の栄養塩が滞留しやすく、赤潮の発生が見られるなど、いきものの棲みにくい水質だと言われています。
同製油所では、そのような海域に多様ないきものが生息できるよう、藻場づくりに取り組んでいます。製油所の護岸部に、藻類の種子および藻類が着生するためのブロックを設置し、その生育状況をモニタリングしています。
藻場を創出することにより、栄養塩の吸収と酸素の供給による水質改善、海生生物の産卵・成育場所の増加、藻類の光合成を通じたブルーカーボンの蓄積等、多面的な効果を期待できます。
この取り組みは、2022年度に環境省の「令和の里海づくり」モデル事業に選ばれています。

藻類等が着生しやすいブロックの設置

森林保全・整備活動

当社グループは、グループ各社において、生物多様性の保全に寄与する森林保全活動を展開しています。
ENEOSでは、地方自治体や公益社団法人国土緑化推進機構と協働し、全国6カ所で「ENEOSの森」と冠した森林保全活動を実施しています。
JX石油開発では、1998年から中条油業所(新潟県)構内および周辺において「JX中条の森」と冠した森林保全活動を続けています。
JX金属では、休廃止鉱山の跡地を中心に、植林・下刈作業等の森林整備活動を継続的に行い、自然環境の維持増進を図っています。

「ENEOSの森」での活動
「JX中条の森」での植林活動
「日鉱 龍樹の森」(山形県南陽市)での植林活動
「日鉱 龍樹の森」(山形県南陽市)での植林活動

社員食堂でのサステナブル・シーフード メニュー提供

社員食堂でのメニュー提供の様子

当社は、当社およびグループ各社が利用するENEOSビル社員食堂で、2019年から、月に1回、サステナブル・シーフードを利用したメニューの提供を行っています。2020年からは、一部製油所の社員食堂においてもサステナブル・シーフードメニューを提供しています。
この取り組みにより、身近な存在である食を通してグループ各社従業員の生物多様性保全や環境保全意識の向上を図っています。

  • *持続可能な漁業・養殖場で獲られた水産物のこと。
    持続可能な漁業で獲られた水産物には「MSC認証」、責任ある養殖により生産された水産物には「asc認証」があります。

海外での主な取り組み

バラスト水(海水)対策

日本から産油国へ向かうタンカーは、空船時の運航安定性を維持するため、「重し」としてバラスト水を積んでいます。そのため、日本の海域に生息する微生物やプランクトンがバラスト水とともに遠く産油国の海域に運ばれ、生態系バランスを崩す原因となっていました。
当社グループでは、2004年から外洋でバラスト水を入れ替える方法や新造船にはバラスト水処理装置を搭載する方法を採用し、産油国の湾内海域の生態系バランスに配慮しています。2022年度に、当社グループが所有するタンカー15隻全船にバラスト水処理装置の搭載を完了しました。
なお、バラスト水は、国際条約に適合した方法で船舶から排出しています。

  • *バラスト水中の水生生物を一定基準以下にして排水する装置。