3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進

基本的な考え方

ENEOSグループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社および社会全体の廃棄物低減や資源循環に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)を推進するとともに、リサイクル事業を拡大していきます。

体制

体制については、環境マネジメントをご参照ください。

重点課題と計画・実績

2022年度の目標と結果・進捗

評価:達成・順調未達

ESG重点課題 取り組み項目 目標(KPI) 結果・進捗
循環型社会形成への貢献 廃棄物最終処分低減 廃棄物最終処分率:
ゼロエミッション(1%未満)の維持

0.8%

第2次中期環境経営計画(2020~2022年度)

目標

  1. 廃棄物最終処分率
    ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持

2022年度実績

  1. 廃棄物最終処分率実績
    最終処分率 0.8%

主な取り組み

廃棄物の削減

当社グループは、ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでいます。
2022年度の総廃棄物量は3,691千トン、最終処分量は30千トンでした。最終処分率は0.8%であり、ゼロエミッションを継続しています。
前年度からの変動要因としては、集計対象拠点の拡大およびJX金属での生産量の増加等が挙げられ、これらの影響により総廃棄物量および最終処分量は増加しています。最終処分率に変動はありません。
廃棄物削減策として、製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓*1の繰り返し使用等による循環利用・再利用を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法*2を用いています。

  1. *1製錬工程での中和反応によって生じる生成物。
  2. *2製品製造について、原料等の「調達」から「製造」「輸送」「使用」「廃棄」までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。LCAはLife Cycle Assessmentの略。

廃棄物の適正管理

当社は、廃棄物処理法の努力義務にのっとり、製油所において排出した廃棄物が適切に最終処分されることを確認しています。

  • マークについては編集方針をご確認ください。

廃棄物最終処分量および処分率

  • 上記に関連する詳細データについては、データ編をご参照ください。

リサイクル原料の使用量拡大

当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。
JX金属では、100年以上にわたって培った製錬技術を活用したプロセスにより、リサイクル原料から銅・貴金属・レアメタル等を効率的に回収し、資源の有効利用を促進しています。同社は、長期的には銅製錬におけるリサイクル原料(原料投入比率もしくは製品中の含有比率)を50%まで増やすことを目指しています。
2022年度に事業活動で使用した原材料の総量1,856千トンのうち、再生資源原料は240千トンでした。

非鉄製錬・リサイクル関連分野の人材育成

近年、日本国内の非鉄製錬・リサイクル関連分野の研究者・技術者は減少の一途をたどっています。こうした現状を踏まえ、産官学が一体となり、業界の活性化、底上げを図ることを目指し、JX金属は東京大学生産技術研究所と協働して、非鉄金属資源循環工学寄付研究部門(JX金属寄付ユニット)を設置しています。JX金属寄付ユニットでは、産学連携により製錬技術を利用・発展させ、非鉄ベースメタルとレアメタルに関する人材の育成を目的としてさまざまな取り組みを行っています。

リチウムイオン電池からのレアメタルリサイクルの研究

JX金属では、2009年からリチウムイオン電池に含まれるレアメタルのリサイクルに取り組んでいます。
2020年には、日立事業所の技術開発センター内にベンチスケール設備(連続式小型試験装置)を設置し、使用済みの車載用リチウムイオン電池からレアメタルを回収、再び車載用電池の原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に向けた技術開発に取り組んでいます。この技術の実証のため、2021年5月にJX金属サーキュラーソリューションズ(JXCS)を設立、高純度硫酸ニッケル(2021年)、高純度硫酸コバルト(2022年)、高純度炭酸リチウム(2023年)の回収設備をそれぞれ稼働させて実証試験操業中です。また、同社の取り組みは、2022年4月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション(GI)基金に採択されています。
一方、EVシフトが進む欧州においては、2021年8月にJX Metals Circular Solutions Europe GmbH(JXCSE、ドイツ)を設立、欧州自動車メーカー等との協業を見据えたリチウムイオン電池リサイクルの事業化への取り組みを進めています。同社は、グループ会社のTANIOBIS(ドイツ)を通じて、2022年1月、ドイツ連邦経済・気候保護省(BMWK)が支援するHVBatCycleコンソーシアムに参画しています。同コンソーシアムの一環として、同社技術によるクローズドループ・リサイクルを実証すべく、TANIOBIS構内にゴスラーBSプラント*を設置し、2023年3月に稼働を開始しました。

  • *溶媒抽出法により電池粉(ブラックマス)から高純度のレアメタルをさまざまな形態(液、塩、メタル)で回収するベンチスケール設備(連続型小型試験装置)。

サーキュラーエコノミーの推進

当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー*1を推進します。
世の情勢が、リニアエコノミー*2からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。
社会に供給されている製品は、資源の調達から製造、販売、使用、廃棄に至るライフサイクルの各段階でCO2が発生します。製造したものを廃棄せず、リサイクルにより循環させることで、CO2の発生を抑制できます。
当社グループは、素材・サービス分野において原料の非化石資源化やシェアリングビジネスに取り組むことで、サーキュラーエコノミーを推進し、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

  1. *1バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み。
  2. *2消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み。

従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーに関する取り組み

プラスチック油化の共同事業(ケミカルリサイクル)

ENEOSは、鹿島製油所がある鹿島コンビナートにおいて、三菱ケミカル(株)とのプラスチックの共同油化事業に取り組んでいます。商業ベースでは国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中で、2023年度に廃プラスチックの油化開始を目標としています。同設備で製造したリサイクル生成油を原料として、両社の持つ石油精製装置およびナフサクラッカーで石油製品や各種プラスチックへと再製品化します。

廃潤滑油を活用した潤滑油ベースオイルの再生(マテリアルリサイクル)

ENEOSは、廃潤滑油を活用した潤滑油ベースオイルへの再生プロセス構築の事業化に取り組んでいます。廃潤滑油を潤滑油製品の主要基材であるベースオイルとしてリサイクルすることで、潤滑油のライフサイクル全体で排出するCO2の削減、さらには、ベースオイルの安定供給にも寄与します。2022年度から2年間の実証事業で技術検証を進め、早期の事業化を目指します。
本実証事業は、環境省の公募事業「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択されています。

潤滑油ライフサイクルにおける再生ベースオイル事業の範囲

製錬リサイクル事業

JX金属は、銅と貴金属・レアメタルを中心とした非鉄金属の資源開発から製錬リサイクル、電子材料等の高付加価値素材の提供まで、有機的なつながりを持つ一貫した事業を展開しています。このバリューチェーンのなかで「動脈」と「静脈」の両方の側面を持つのが製錬リサイクルであり、次の3つの事業を展開しています。

  • 製錬事業:鉱山からの精鉱を製錬して金属を回収する事業
  • リサイクル事業:精鉱を製錬する際の反応熱を活用してリサイクル原料を溶解し、金属を再資源化・回収する事業
  • 環境事業:産業廃棄物を無害化処理する事業

JX金属は、製錬リサイクルにおける「ゼロエミッション」「製錬技術をベースとしたJX金属独自の処理プロセス」「世界に広がる集荷ネットワーク」といった特長・強みを活かしながら、持続可能な資源循環型社会の構築に大きく貢献しています。

製錬リサイクル事業の特長と強み
1.ゼロエミッション
JX金属製錬 日立工場HMC製造部

JX金属は、製錬事業、リサイクル事業のいずれも、埋め立て処分を必要とする二次廃棄物を発生させない「ゼロエミッション」を追求しています。非鉄金属以外の鉄分等はスラグとして回収され、セメント原料等として利用されます。二次廃棄物を出さないことで、環境負荷を低減しています。

2.製錬技術をベースとしたJX金属独自の処理プロセス
ゼロエミッション追求による資源循環への取り組み

JX金属は、鉱山や製錬所の操業で長年培ってきた技術をベースとして独自に構築した、効率的かつ信頼のおける処理プロセスにより、リサイクル事業における非鉄金属の再資源化を行っています。
なかでもJX金属製錬の佐賀関製錬所は、アジア最大級の銅・貴金属リサイクル拠点であり、銅精鉱を製錬する際の反応熱を利用してリサイクル原料の溶解を行うことで、省エネルギーを実現しています。

3.世界に広がる集荷ネットワーク

JX金属は、リサイクル事業を推進するため、国内外においてリサイクル原料の増集荷および銅製錬設備での増処理に注力しています。2021年度に、JX金属製錬の佐賀関製錬所(大分)に集荷拠点の新設ならびに前処理設備の増設を行いました。海外では、既存の台中(台湾)の集荷・前処理拠点、アリゾナ州(米国)、フランクフルト(ドイツ)の集荷サポート拠点に加え、2022年度には、新たにeCycle Solutions Inc.(カナダ)を買収し、電気・電子廃棄物の収集・解体・選別事業に参入しました。国内外で集荷されたリサイクル原料は、苫小牧(北海道)、三日市(富山県)、白河(福島県)にあるグループ会社で回収された原料とともに、日立(茨城県)および佐賀関製錬所で受け入れ・前処理された後、佐賀関製錬所で金属を再資源化・回収しています。