3R(リデュース・リユース・リサイクル)推進

基本的な考え方

ENEOSグループは、「循環型社会形成への貢献」に向けて、自社および社会全体の廃棄物低減や資源循環に努めます。グループ内で資源の有効活用や廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)を推進するとともに、リサイクル事業を拡大していきます。

体制

体制については、環境マネジメントをご参照ください。

重点課題と計画・実績

2023年度の目標と結果・進捗

評価:達成・順調未達

ESG重点課題 取り組み項目 目標(KPI) 結果・進捗
循環型社会形成への貢献 廃棄物最終処分低減 廃棄物最終処分率:
ゼロエミッション(1%未満)維持

1.2%

実績

  • マークについては編集方針をご確認ください。

廃棄物最終処分量および処分率

  • 上記に関連する詳細データについては、データ編をご参照ください。

主な取り組み

廃棄物の削減

当社グループは、ゼロエミッション(最終処分率1%未満)の維持を目標に掲げ、廃棄物の適正管理・再資源化に取り組んでいます。
2023年度の総廃棄物量は3,482千t、最終処分量は41千tでした。最終処分率は1.2%となり、ゼロエミッションは未達となりました。前年度からの変動要因としては、建設事業における建築解体工事と舗装修繕工事の増加等が挙げられ、これらの影響により最終処分量および最終処分率が増加しています。
製油所・製造所で発生する廃棄物の中で最も多いのは汚泥で、総量の約40%を占めています。廃棄物削減策として、製油所等から排出される汚泥や集塵ダストのセメント原料化、製錬所で発生する中和滓*1の繰り返し使用等による循環利用・再利用を推進しています。また、一部の潤滑油製品の開発評価にあたっては、LCA手法*2を用いています。

  1. *1製錬工程での中和反応によって生じる生成物。
  2. *2製品製造について、原料等の「調達」から「製造」「輸送」「使用」「廃棄」までのライフステージ全体の環境影響を定量的に評価する手法。LCAはLife Cycle Assessmentの略。
産業廃棄物に関する、法定を超える目標やプロセス

循環型社会の形成を目指す日本経済団体連合会(経団連)の呼びかけに応え、石油業各社は製油所における廃棄物抑制・リサイクルに取り組んできました。経団連の「循環型社会形成自主行動計画」における石油業の目標は2025 年度において最終処分率 1%以下の維持・継続です。ENEOSは経団連の目標よりも厳しいゼロエミッション・プラス(最終処分率0.3%未満)の維持を目標に掲げ、最終処分率の低減に努めています。

廃棄物の適正管理

当社は、廃棄物処理法の努力義務にのっとり、製油所において排出した廃棄物が適切に最終処分されることを確認しています。各製油所で、委託先事業者の監査を計画的に実施しています。

リサイクル原料の使用量拡大

当社グループは、生産の効率化による原材料の使用量削減、リサイクル原料の使用量拡大を進めています。
JX金属では、100年以上にわたって培った製錬技術を活用したプロセスにより、リサイクル原料から銅・貴金属・レアメタル等を効率的に回収し、資源の有効利用を促進しています。同社は、長期的には銅製錬におけるリサイクル原料(原料投入比率もしくは製品中の含有比率)を50%まで増やすことを目指しています。
2023年度に事業活動で使用した原材料の総量1,627千トンのうち、再生資源原料は230千トンでした。

マスバランス方式を用いた100%リサイクル電気銅の上市

JX金属は、2024年1月、マスバランス方式*を用いた2種類の100%リサイクル電気銅「PCL100/mb(Partnered Closed Loop 100% mass balance method)」と「MR100/mb(Mixed Recycle 100% mass balance method)」 を2024年度中に上市することを公表しました。
「PCL100/mb」は、お客様が回収した使用済み製品由来をはじめとするリサイクル原料に含まれる銅の相当量を100%リサイクル電気銅としてお返しするものです。「MR100/mb」は、同社グループのリサイクル原料回収ネットワークを通して市中から収集したリサイクル原料をもとに100%リサイクル電気銅を供給します。
いずれも国内の銅製錬業界初の試みであり、特に「PCL100/mb」は、資源循環と脱炭素という社会課題の解決策を同社とお客様が共創していく先進的な提案です。
100%リサイクル電気銅の社会実装を目指す活動を「Cu again(シーユー アゲイン)」プロジェクトとして始動し、お客様と国内の資源循環を共創していきます。

  • * 特性の異なる原料が混合される場合に、ある特性を持つ原料の投入比率に応じて、生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法。

非鉄製錬・リサイクル関連分野の人材育成

近年、日本国内の非鉄製錬・リサイクル関連分野の研究者・技術者は減少の一途をたどっています。こうした現状を踏まえ、産官学が一体となり、業界の活性化、底上げを図ることを目指し、JX金属は東京大学生産技術研究所と協働して、非鉄金属資源循環工学寄付研究部門(JX金属寄付ユニット)を設置しています。同ユニットでは、産学連携により製錬技術を利用・発展させ、非鉄ベースメタルとレアメタルに関する人材の育成を目的としてさまざまな取り組みを行っています。
2023年度は「国内製造業の人材確保・育成の課題と取組みに関するシンポジウム」を9月に開催。非鉄各社による人材確保・育成の現状や寄付講座の紹介と、パネルディスカッションを実施しました。

リチウムイオン電池からのレアメタルリサイクルの研究

JX金属では、2009年からリチウムイオン電池に含まれるレアメタルのリサイクルに取り組んでいます。
2020年には、日立事業所の技術開発センター内にベンチスケール設備(連続式小型試験装置)を設置し、使用済みの車載用リチウムイオン電池からレアメタルを回収、再び車載用電池の原料として使用する「クローズドループ・リサイクル」の実現に向けた技術開発に取り組んでいます。この技術の実証のため、2021年5月にJX金属サーキュラーソリューションズ敦賀を設立、高純度硫酸ニッケル(2021年)、高純度硫酸コバルト(2022年)、高純度炭酸リチウム(2023年)の回収設備をそれぞれ稼働させて実証試験操業中です。また、同社の取り組みは、2022年4月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション(GI)基金事業*1に採択されています。
一方、欧州においては、2021年8月にJX Metals Circular Solutions Europe GmbH(JXCSE、ドイツ)を設立、欧州自動車メーカー等との協業を見据えたリチウムイオン電池リサイクルの事業化への取り組みを進めています。同社は、グループ会社のTANIOBIS GmbH(ドイツ)を通じて、2022年1月、ドイツ連邦共和国経済・気候保護省(BMWK)が支援するHVBatCycleコンソーシアムに参画しています。同コンソーシアムの一環として、同社技術によるクローズドループ・リサイクルを実証すべく、TANIOBIS構内にゴスラーBSプラント*2を設置し、2023年3月に稼働を開始しました。

  1. *1日本の「2050年カーボンニュートラル」に向けた経営課題に取り組む企業等に対して、国が10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援する事業。
  2. *2溶媒抽出法により電池粉(ブラックマス)から高純度のレアメタルをさまざまな形態(液、塩、メタル)で回収するベンチスケール設備(連続型小型試験装置)。

サーキュラーエコノミーの推進

当社グループは、従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けて、サーキュラーエコノミー*1を推進します。
世の情勢が、リニアエコノミー*2からサーキュラーエコノミーへ、すなわち、大量生産・大量消費型の経済から資源循環型の経済へと移行しつつあります。3Rから一歩進み、製品設計段階からの配慮、メンテナンスによる製品寿命の延長、リースやシェアリングによる利用効率の向上等も重視されています。
社会に供給されている製品は、資源の調達から製造、販売、使用、廃棄に至るライフサイクルの各段階でCO2が発生します。製造したものを廃棄せず、リサイクルにより循環させることで、CO2の発生を抑制できます。
当社グループは、素材・サービス分野において原料の非化石資源化やシェアリングビジネスに取り組むことで、サーキュラーエコノミーを推進し、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきます。

  1. *1バリューチェーン上のあらゆる段階における資源の効率的な利用により資源循環を目指す経済の仕組み。
  2. *2消費された資源をリサイクル・再利用することなく廃棄してしまい、直線的(Linear)にモノが流れる経済の仕組み。

従来型資源に依存しない循環型社会の実現に向けたサーキュラーエコノミーに関する取り組み

プラスチック油化の共同事業(ケミカルリサイクル)

ENEOSでは、鹿島製油所がある鹿島コンビナートにおいて、三菱ケミカル(株)とのプラスチックの共同油化事業に取り組んでいます。商業ベースでは国内最大規模となる年間2万トンの処理能力を備えたケミカルリサイクル設備を建設中です。同設備で製造したリサイクル生成油を原料として、両社の持つ石油精製装置およびナフサクラッカーで石油製品や各種プラスチックへと再製品化します。

プラスチック油化のフロー

使用済みタイヤを活用した合成ゴム原料の再生(ケミカルリサイクル)

タイヤの主な材料の1つとして石油由来の合成ゴムが使われています。ENEOSは(株)ブリヂストンと協力し、使用済みタイヤを精密熱分解して得られる分解油を原料として再び合成ゴムの素原料である化学品等を製造するケミカルリサイクル技術の確立を目指しています。将来に向けて、タイヤ・ゴム産業および石油・石油化学産業のバリューチェーンにおけるさらなる資源循環性の向上やCO2排出量の削減に取り組みます。なお、本取り組みは、2022年2月に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択されています。

サービスステーションを活用した使用済みペットボトル回収、ならびにリサイクルチェーン構築の実証(ケミカルリサイクル、マテリアルリサイクル)

ENEOSでは、2023年4月から、サントリーホールディングス(株)および協栄産業(株)と協働し、川崎市と宇都宮市のENEOSサービスステーション(SS)で使用済みペットボトルの回収・再資源化を実証中です。同実証を通じて、サービスステーションネットワークを活用した使用済みペットボトルの回収、ならびに再資源化・再製品化および再商品化という水平リサイクルチェーン構築の実現可能性を検証しています。

使用済みペットボトルの水平リサイクルチェーン

廃プラスチックを活用したアスファルト舗装(マテリアルリサイクル)

一般的なアスファルト舗装は約95%(重量比)が骨材と呼ばれる石や砂で構成され、バインダーと呼ばれるアスファルトがそれらを繋ぎ留める役割を担っています。
ENEOSでは、その骨材すべてを廃プラスチックに置き換えたアスファルト舗装技術の開発に取り組んでいます。2023年10月に静岡県浜松市でイオンリテール(株)が開店した新店舗「そよら浜松西伊場」、2024年3月に茨城県牛久市に開設した「ENEOSプラットフォーム」に敷設し、実証試験を行っています。
マテリアルリサイクルが難しく、サーマルリサイクル向けがメインとなっている廃プラスチックを活用することにより、従来のアスファルト舗装に比べ約40%のCO2排出量削減効果が期待できます。

廃潤滑油を活用した潤滑油ベースオイルの再生(マテリアルリサイクル)

ENEOSでは、廃潤滑油を活用した潤滑油ベースオイルへの再生プロセス構築の事業化に取り組んでいます。廃潤滑油を潤滑油製品の主要基材であるベースオイル(基油)としてリサイクルすることで、潤滑油のライフサイクル全体で排出するCO2の削減、さらには、ベースオイルの安定供給にも寄与します。
環境省の公募事業「脱炭素社会を支えるプラスチック等資源循環システム構築実証事業」に採択され、2022年度から2年間の実証事業において、低炭素基油の製造に成功しました。技術検討においては、トヨタ自動車(株)の協力のもと市場から集めた、使用済みエンジンオイルを原料として使用しています。

潤滑油ライフサイクルにおける再生ベースオイル事業の範囲

世界初のバイオパラキシレン製造による「バイオマス to ペットボトル」の取り組み(バイオマス利活用)

ENEOSは、2023年8月、サントリーホールディングス(株)および三菱商事(株)とバイオパラキシレンを原料としたサステナブルPET樹脂のサプライチェーン構築に合意し、取り組んでいます。ENEOSでは、ペットボトルの原料であるパラキシレンを製造しており、非化石原料を活用した化学品の供給について検討を進めてきました。先般構築した同サプライチェーンにおいて、ENEOS水島製油所で使用済み食用油などの未利用資源を用いたバイオマス原料からマスバランス方式*により、商業規模で世界初となるバイオパラキシレンを製造します。バイオパラキシレンを通じた「バイオマス to ペットボトル」の実現により、当社グループがカーボンニュートラル基本計画に掲げる「ケミカル素材原料の非化石比率の向上」を推進します。

  • 原料から製品への流通・加工工程において、バイオマス原料等の特性を持った原料がそうでない原料と混合された場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて製品の一部に対してその特性を割り当てる手法。サプライチェーンに登場する各社が、それぞれのInとOutのバランスを管理することで、原料の持つ特性の価値を最終製品までつなぐ仕組み。

「バイオマス to ペットボトル」のサプライチェーン

シェアリングサービスによるバッテリーの循環利用(シェアリング)

ENEOSのSSではバッテリーの循環利用に取り組んでいます。電動二輪車用バッテリーシェアリングサービスを提供する(株)Gachaco*を2022年に設立。東京・大阪を中心に50カ所のSSにバッテリー交換拠点を設置し、バッテリーの循環利用の仕組み構築を進めています。

  • *ENEOSホールディングス、本田技研工業(株)、カワサキモータース(株)、スズキ(株)、ヤマハ発動機(株)の5社による合弁会社。

製錬リサイクル事業

JX金属は、銅と貴金属・レアメタルを中心とした非鉄金属の資源開発から製錬リサイクル、電子材料等の高付加価値素材の提供まで、有機的なつながりを持つ一貫した事業を展開しています。このバリューチェーンの中で「動脈」と「静脈」の両方の側面を持つのが製錬リサイクルであり、次の3つの事業を展開しています。

  • 製錬事業:鉱山からの精鉱を製錬して金属を回収する事業
  • リサイクル事業:精鉱を製錬する際の反応熱を活用してリサイクル原料を溶解し、金属を再資源化・回収する事業
  • 環境事業:産業廃棄物を無害化処理する事業

JX金属は、製錬リサイクルにおける「ゼロエミッション」「製錬技術をベースとしたJX金属独自の処理プロセス」「世界に広がる集荷ネットワーク」といった特長・強みを活かしながら、持続可能な資源循環型社会の構築に大きく貢献しています。

製錬リサイクル事業の特長と強み
1.ゼロエミッション
JX金属製錬 日立工場HMC製造部

JX金属は、製錬事業、リサイクル事業のいずれも、埋め立て処分を必要とする二次廃棄物を発生させない「ゼロエミッション」を追求しています。非鉄金属以外の鉄分等はスラグとして回収され、セメント原料等として利用されます。二次廃棄物を出さないことで、環境負荷を低減しています。

2.製錬技術をベースとしたJX金属独自の処理プロセス
ゼロエミッション追求による資源循環への取り組み

JX金属は、鉱山や製錬所の操業で長年培ってきた技術をベースとして独自に構築した、効率的かつ信頼のおける処理プロセスにより、リサイクル事業における非鉄金属の再資源化を行っています。
なかでもJX金属製錬の佐賀関製錬所は、アジア最大級の銅・貴金属リサイクル拠点であり、銅精鉱を製錬する際の反応熱を利用してリサイクル原料の溶解を行うことで、省エネルギーを実現しています。

3.世界に広がる集荷ネットワーク

JX金属は、リサイクル事業を推進するため、国内外においてリサイクル原料の増集荷および銅製錬設備での増処理に注力しています。2021年度に、JX金属製錬の佐賀関製錬所(大分)に集荷拠点の新設ならびに前処理設備の増設を行いました。海外では、既存の台中(台湾)の集荷・前処理拠点、アリゾナ州(米国)、フランクフルト(ドイツ)の集荷サポート拠点に加え、2022年度には、新たにeCycle Solutions Inc.(カナダ)を買収し、電気・電子廃棄物の収集・解体・選別事業に参入しました。国内外で集荷されたリサイクル原料は、苫小牧(北海道)、三日市(富山県)、白河(福島県)にあるグループ会社で回収された原料とともに、日立(茨城県)および佐賀関製錬所で受け入れ・前処理された後、佐賀関製錬所で金属を再資源化・回収しています。