基本的な考え方
ENEOSグループは、従業員およびその家族の健康を大切にすることが、従業員の活力向上、生産性向上および組織活性化につながり、ひいては成長戦略実現の原動力や競争力の源泉になると考えています。
このような考え方のもと、健康に関する基本原則をグループ行動基準に定めるとともに、従業員の自律的な健康管理および健康増進に寄与すべく「健康経営」を推進しています。
ENEOSグループ行動基準(抜粋)
- 4.健康増進
- (1)私たちは、働く人の健康は企業の継続および発展の基盤であるとの認識のもと、心身の健康を維持・増進するための取組みを積極的に支援し、健康確保のための努力を尽くします。
- (2)私たちは、労働衛生の継続的な発展のために、外部と協力して情報収集・発信を行うとともに、事業活動に伴う健康障害リスクを特定し、評価を行い、そのリスクを抑制する対策を推進します。
ENEOSグループ健康宣言
ENEOSグループは、「エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会の発展と活力ある未来づくりへ貢献する」ことを使命とし、グループ理念において「安全・環境・健康」を大切にしたい価値観の一つとして掲げています。
従業員およびその家族の健康を重視することが、競争力の源泉である従業員の活力・生産性向上や組織活性化につながり、さらには成長戦略実現の原動力になると考え、大切な従業員の心身の健康を維持・増進するための取り組みである「健康経営」を積極的に推進していくことを宣言します。
健康経営の全体像

体制
体制については、「ESG経営推進体制」をご参照ください。
また、健康経営を推進するため「健康経営のサポート体制」を整え、事務局を人事部内に設置し、健康保険組合や関係会社・各事業所と連携しながらさまざまな取り組みを行っています。
国内の各事業所においては、安全衛生委員会または衛生委員会を毎月開催し、会社側と労働組合または従業員の代表が衛生について話し合いを行っています。
健康経営のサポート体制

- *1ENEOSグループの健康経営方針の共有、各社取り組みの確認、進捗状況のモニタリングを行う。
- *2健康管理センターには、産業医(精神科3名、循環器内科、消化器内科、神経内科)、看護師、保健師が在籍。
重点課題と計画・実績
2023年度の目標と結果・進捗
評価:達成・順調未達
ESG重点課題 | 取り組み項目 | 目標(KPI) | 結果・進捗 | |
---|---|---|---|---|
安全確保・健康増進 | 従業員の健康確保 | 適正体重維持者比率 BMI25未満比率70%以上を維持 | 69.7%(一部対象会社で目標未達となったため) | |
喫煙率の低減 喫煙習慣者比率前年比マイナス1.0%以上 | 前年比プラス2.1%(施策の不調、環境の未整備等により、全社的に増加したため) |
主な取り組み
従業員の健康管理
ENEOSグループ*1は、国内外で定期健康診断の受診率100%実施に加えて、生活習慣病予防に向けたサポートとして、喫煙率の低減*2および適正体重(BMI25未満)維持者比率70%以上*3を目標に取り組んでいます。海外渡航者・海外勤務者に対しては、疫病・感染症予防接種や医療サポート制度等の整備に努めています。また、健康増進法の趣旨にのっとり、受動喫煙リスクの徹底的な排除にも取り組んでいます。
2023年度は、定期健康診断の受診率100%を維持しました。喫煙率は前年度比約2ポイント上昇し、適正体重維持者の比率は69.7%と目標の70%にわずかに届きませんでしたが、次年度の目標達成に向けて取り組みを続けます。特に、喫煙率低減については、環境の整備、個々人の意識向上施策と具体的な禁煙プログラムを並行展開することで、増加傾向にある現状を改善すべく取り組みます。また、有所見者の再検査受診率向上のため、対象者への勧奨を積極的に実施しています。
- *1集計対象:ENEOSホールディングスおよび主要な事業会社(ENEOS、ENEOS Xplora、JX金属)。
- *22023年度目標:喫煙習慣者比率前年比マイナス1.0%以上。
- *32023年度目標:適正体重(BMI25未満)維持者の比率70%以上を維持。
健康管理に関する指標
2024年度の目標として、前年度から継続している適正体重維持者の比率(BMI)と喫煙率の2つを掲げています。
BMIは、疾病予防の主な方策である生活習慣病の予防に向けた指標として用います。BMIが25を超えると、脂質異常症や糖尿病、高血圧等のリスクが2倍以上になるとされています。適正体重(BMI25未満)維持者の比率70%以上を目標とし、定期健診後の保健指導などを通じて改善を要する従業員をサポートしていきます。
喫煙率については、従来実施してきた受動喫煙リスクの徹底的な排除に向けた指標として用います。喫煙は、肺がんの主な原因であり、他の多くの疾病のリスク要因でもあることから、全社的な禁煙化が従業員の健康増進に寄与することは明白です。ENEOSグループ健康保険組合においても2020年度から禁煙サポートプログラムを継続的に実施していることから、同組合との協働という観点からも有益な指標であると判断できます。喫煙率を前年比で1.0%以上低減し、最終的に20%以下にすることを目標とします。
メンタルヘルス対策
当社グループは、メンタルへルス不調となることを未然に防止するために「ストレスチェック制度」を有効に活用しています。従業員一人ひとりが自身のストレスに気付くことに役立て、高ストレス者への個別フォローとして、産業医の面談に加えて外部カウンセラーによるカウンセリング体制等*を整備しています。
また、ストレスチェックの結果に基づき、組織における集団分析を実施し、高ストレス職場への職場環境改善に向けた研修や助言、支援を実施しています。
2023年度においても管理職に対する結果のフィードバックおよび個別相談を行い、さらに必要に応じて外部専門家による研修や個別面談、その後のアクションプランシート作成とフォローを実施しています。
2024年度から、個人のストレスチェック結果に基づいてプランニングされたセミナーを、各自が任意の時間に受講できる仕組みを導入しました。1次予防の一環として自発的にセミナーを受講することで、メンタル不調による新規休職者数の低減を図っています。また、メンタルヘルスの問題によって休業することがあっても、本人が安心して職場に復帰できるよう「職場復帰支援プログラム」を展開し、一人ひとりに寄り添った対応をしています。
- * 外部カウンセラーによるカウンセリングは従業員の誰でも利用可能。
海外渡航者・海外勤務者の健康対策
当社グループは、海外渡航者・海外勤務者の疾病予防として、厚生労働省検疫所ウェブサイトの渡航先別の推奨予防接種を渡航前に実施するなど、積極的に取り組んでいます。
ENEOSでは、感染症の流行に備えた安全対策として、国内拠点に準じて海外拠点においても備蓄物資を配備しています。2021年度から海外勤務者を対象に、自身のストレスへの気付きを促しメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)を目的とした「ストレスチェック」を実施しており、今後も年に1回実施する予定です。
ENEOS Xploraでは、マラリア対策として「マラリア流行地域への渡航にかかわる取り扱い基準」を定めています。この基準では、一定の条件下で海外への渡航者が抗マラリア薬を予防内服する場合の費用を会社負担とすることや、感染した場合の対応を示しています。また、海外勤務者の過重労働による心身の健康被害を未然に防ぐため、月間の超過労働時間が一定基準を超える従業員にはセルフチェックシートの提出を求め、必要に応じて産業医面談または電話健康相談を実施します。
JX金属では、海外駐在員の健康情報を健康管理支援システムで一元管理し、渡航前後および渡航中の健康管理について、積極的に働きかけています。また、海外駐在員に対しても、メンタルヘルス不調の未然防止を目的としてストレスチェックを実施しています。なお、帯同家族についても、赴任前に健康診断結果等を産業医が確認し、必要に応じ現地で継続的に医療を受けられるよう支援しています。
製油所等生産拠点での産業衛生
当社グループは、製油所等の生産拠点で働く人の健康障害を防止するため、各所の産業衛生の専門職を育成しながら産業衛生活動を推進しています。
ENEOSでは、代表的な活動として化学物質ばく露対策および騒音ばく露対策があります。また、労働組合とも組合員の安全衛生を図るために会社が必要な施設の整備に努めることを確認しています。
JX金属グループでは、請負職場であるか否かにかかわらず、労働者の健康障害を防止するため、作業環境の測定や評価を行い、その結果に基づいて作業環境を改善しています。
化学物質のばく露対策

ENEOSでは、製油所等におけるさまざまな作業や環境の中で、健康障害を引き起こす化学物質を特定し、個人サンプラーを用いたばく露測定により、リスクアセスメントを行っています。評価したばく露リスク結果に基づいて、リスクを抑制するための適切な対策を実施し、作業員の健康障害の防止に努めています。
騒音のばく露対策

ENEOSでは、製油所等において騒音性難聴防止対策を展開しています。
製油所等のすべての装置エリアにおいて騒音測定を網羅的に実施し、騒音性難聴防止のための基準値である85デシベル以上および95デシベル以上の場所を特定し、高騒音エリアのマップ化を実施しています。
騒音レベルに応じて、耳栓やイヤーマフ等の防音保護具を着用して作業をするよう製油所全体の統一ルールを定めています。特に95デシベル以上の高騒音エリアでは耳栓とイヤーマフを併用するダブルプロテクションによって、より厳重な騒音防止対策を実施しています。
健康関連指標
主要な事業会社における健康関連指標の推移
健康関連指標 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | ||
---|---|---|---|---|---|
1 | 定期健康診断受診率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | |
2 | 喫煙率 | 22.8% | 22.0% | 24.1% | |
3 | 適正体重維持者の比率(BMI25未満) | 70.3% | 70.9% | 69.7% | |
4 | 運動習慣維持*1者の比率 | 37.7% | 34.6% | 27.4% | |
5 | がん検診受診率 | 胃がん | 68.4% | 68.7% | 66.3% |
大腸がん | 73.8% | 78.0% | 74.8% | ||
子宮頸がん | 37.6% | 46.8% | 43.9% | ||
乳がん | 46.4% | 58.0% | 53.4% | ||
6 | 二次検査受診率 | ー | ー | 63.9% | |
7 | ストレスチェック受検率 | 95.3% | 93.4% | 94.9% | |
8 | 高ストレス者比率 | ー | 8.4% | 8.9% | |
9 | アブセンティーイズム*2 | 1.3日 | 1.4日 | 1.9日 |
- ※集計対象:ENEOSホールディングスおよび主要な事業会社(ENEOS、ENEOS Xplora、JX金属)。
- *1運動習慣の維持とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している場合を指します。
- *2 アブセンティーズムの定義:従業員1人当たりで年間何日程度、欠勤・休職しているかを指します。
測定方法:全従業員の私傷病による欠勤や休職日数の合計÷従業員数(〇日/人)
健康経営に対する社外評価

当社および主要な事業会社は、健康増進への取り組みを客観的な指標を用いて確認することを目的に経済産業省が実施する「健康経営度調査」に参加しています。2017年度以降7年連続で、保険者と連携して優良な健康経営を実践している法人を認定する「健康経営優良法人」に認定されています。
また、当社の健康経営に関する取り組みについては、健康経営の普及につながるよう社外の研修会や情報誌等において紹介しています。